ひとり旅を歓迎する宿が増えています。旅慣れた人はもちろん、旅行といえば家族といつも一緒だったARIA世代も、時にはひとり旅を楽しみませんか。とはいえ、ひとり泊まりの割高感やひとりで食事をする寂しさから「はじめの一歩」を踏み出せない人も多いはず。そこで、この連載ではひとり旅の達人にひとり旅を楽しむ極意を教えてもらいます。第1回は石井宏子さんに「ひとり温泉」の楽しみを聞きました。

安宿&ゴージャス宿、ひとり旅歓迎の宿が増加

―― ひとり旅を歓迎する宿も増えていますが、どんな傾向ですか。

石井宏子さん(以下、敬称略) 確かにひとり泊まりができる宿は増えました。昨年、『感動の温泉宿100』という本を書いたのですが、一名で宿泊可能な宿は100軒中、86軒もありました。まさに、ひとり温泉の時代が到来です。

 ひとり泊まりができて快適に過ごせる宿の傾向としては、現代湯治の宿などをはじめとする1万~2万円台のカジュアルな宿か、フルコースの食事、スパトリートメントが受けられるなど4万円以上のいわゆるごほうび系の宿かの両極端に分かれるように思います。

―― そもそも現代湯治とは何ですか。

石井 湯治と聞くと昔ながらの病気治療や養生を連想される方も多いですが、 現代湯治はストレスや不摂生が続く現代人のための湯治スタイルとでもいいましょうか。

 食べ過ぎ飲み過ぎ、スマホが手放せず、情報過多でヒートアップ気味の体と心をデトックスする引き算の自分メンテナンスですね。自分の好きな時間に出掛けて好きなように過ごし、優しい食事と温泉で体と心を整える。

 最近は「つながらない」ことがいちばんの養生というような、時代を反映する「デジタルデトックス湯治」も注目されています。

―― ひとり旅は気楽で楽しい。そんな理由でひとり旅を楽しむ人が増えている一方で、ひとり旅をしてみたいとは思うものの、友人や夫婦、家族との旅行経験しかない人には、ハードルが高く感じます。「時には、ひとりでお籠もり旅」に踏み出したい人へアドバイスをお願いします。

「ひとり温泉は日常(オン)のスイッチの切り方を教えてくれます。オフの時間を持ってこそ、オンの時間でジャンプできるんです」(石井さん)。写真は養生館はるのひかりの大浴場
「ひとり温泉は日常(オン)のスイッチの切り方を教えてくれます。オフの時間を持ってこそ、オンの時間でジャンプできるんです」(石井さん)。写真は養生館はるのひかりの大浴場