遠く離れた実家で、父が孤独死していた――。東京でフリーランスエディターをしている如月サラさんはある日、予想もしなかった知らせを受けます。如月さんは50代独身、ひとりっ子。葬儀、実家の片付け、相続に母の遠距離介護など、ショックに立ち尽くす間もなく突如直面することになった現実をひとりで切り抜けていく日々をリアルにつづります。

父が発見されるまでの1週間を耐えた老猫たち

 遠く離れた故郷で父がひとりで死んでいたのが見つかって、葬儀と納骨を済ませるまであっという間の2日間。その翌日、友人たちに手伝ってもらい、実家に大量に残っていたゴミを片付けた。

 ゴミ袋に囲まれて暗い夜に途方に暮れていた私だったが、実はもうひとつ大きな問題を抱えていた。猫のことだ。父が死んで、12歳くらいと推定される老猫4匹が実家に取り残されていた。

 実家では長年、猫を飼っており、私が大学時代に1匹の猫を拾って連れて帰った30年前から、通算27匹の猫を飼育してきた。すべて保護猫か、人から頼まれた猫だ。

 母は地域でTNR活動(捕獲器などで野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻すこと)もしており、動物が大好きな人だったが、ここ10年ほどは新しい猫を迎え入れることをやめていた。「私たちが死んで、猫たちが残されたら困るから」というのが理由だ。そういう母も半年前に倒れて入院し、父がひとりで面倒を見ていたのだ。

 死んでいた父を叔母が発見したとき、猫たちは、段ボール箱を食いちぎって鳴いていたそうだ。なにしろ1週間、餌にありつけなかったのだ。どれだけおなかをすかせて待っていたんだろうと思うと、それだけでも胸がつぶれそうだった。

実家に残されていた4匹の老猫たち
実家に残されていた4匹の老猫たち
まめな父はこれまで飼育した犬猫を表に書いて掲示していた
まめな父はこれまで飼育した犬猫を表に書いて掲示していた

 この老猫たちをどうすればいいのだろう。私の東京・渋谷区の狭い1LDKのマンションには既に3歳の猫が2匹おり、飼育するのは難しそうだ。

 父の死後のさまざまな手続きを進めながら、同時に、東京や横浜でTNR活動をしている友人や故郷の各種保護団体などに当たってみたが、12歳の老猫たちの譲渡は相当難しいだろうとのことだった。

 飼育者の死去によるペットの保護依頼は年々、かなりの割合で増加しており、社会問題になりつつある。「高齢者は動物を飼うな」という発言をSNSで見かけるが、責任をもって最後まで飼うつもりでいても、不意に自分の方が先に死んでしまうこともある。それは高齢者じゃなくとも同じことだ。