50歳を目前に男性から女性へ。心の声に突き従って「女性として生きていく」ことを選択した岡部鈴さん。大手企業の中間管理職として働きながら、自分らしく生きる道へと舵(かじ)を切り、全社員に一斉メールでカミングアウト。働く人の約11人に1人はLGBT当事者だといわれる今、男性から女性へとスイッチした岡部さんが考えるダイバーシティとは? 金曜日の終業直後、「明日から女性として生きていきます」と全社一斉メールを送信。その後、社内で起きたことについてつづります。

週末に届いた同僚からの返信に涙

 前回は、私の「人生のちゃぶ台返し」、についてお話ししました。

 「戻らない、戻れない」と自分で決めたにもかかわらず、こと事の重大さと今後の不安からメールを送信した日は自宅に帰ってもよく眠ることができませんでした。そんな週末、恐る恐る自宅のPCから開いた会社のメールボックス。私の送った「私について」という件名のメールには13通の返信がありました。

恐る恐る開いたメールボックスには同僚から13通の返信が…(写真はイメージ)
恐る恐る開いたメールボックスには同僚から13通の返信が…(写真はイメージ)

 部下の女性社員、いつもは冗談ばかりのクリエーティブの同僚、日焼けしたサーファー風の営業さん、銀縁メガネの営業部長……皆の返信には、私の決断を応援する旨の文字が並んでいました。

 「性別が変わっても、岡部さんは岡部さんなのだから。これからも総務のことよろしくお願いします」。誰もちゃかすことなく、真摯な応援の文字が並んでいました。背景をレインボーカラーにして送信したため、ただでさえ読みづらいメールが涙で曇ってなかなか読むことができませんでした。

 そして、カミングアウト後、初出社となる月曜日。

 同僚からのメールで勇気づけられたとは言え、出社はとても気持ちの重いものでした。

 月曜朝一番の会議はコーポレート部門の部長会。一通りの連絡が済んだのち、上司から伝えられたのはその日の役員会での社長の言葉でした。