ずっと心の奥底に沈めていた「疑問」
九州の高校を卒業後、大学進学、進路変更してコンピューター関係の専門学校へ進学。その後は就職、転職と多少の遠回りやロスはあったにしろ、今までおおむね順調な人生を歩んで来られたと思います。でも、その反面、ぼんやりとした、そして絶対他人には言えない人生への後ろめたさがあったことも事実です。
心の奥底のとても深い場所に何重にも鍵をかけて閉ざしてきた疑問。 「なぜ自分は男に生まれてきたんだろう」
そして、抑えきれない女性への徹底的な嫉妬とコンプレックス。その裏返しとして女性への極度の依存。学生時代から常に誰か女性と交際していないと安心できない自分がいました。
昔の私を知る友人たちは、おそらく「女好きだったアイツが何で? 」と感じたことでしょう。でも、当時の私は、女性が好きだったというより、常に女性と繋がっていたかった。「本当は自分が女性であるべきなのに、そうなれない」自分を慰めるかのように、付き合う女性の中に自分を投影していたのだと思うのです。
何十年も前に心の深海に沈めた小さな思い。それは考えても仕方のないことだとずっと思っていました。
まだ「LGBT」や「トランスジェンダー」などという言葉も知らなかった時代。性別を変更したタレントのカルーセル麻紀さんのことは知っていても、自分にとってはまるでアメリカの宇宙飛行士のように全く縁遠い存在でしたから、まさか現実に自分が女性になれるなんて考えもしませんでした。
でも、40代半ば、そんな私の人生に突然転機が訪れたのです。