夫婦二人きりの暮らしが長くなってくると、休みの日の時間をだんだんと持て余してしまうこともあったり、なかったり…。だからといって、「マンネリ打開のイベントを!」などと肩肘張る必要はありません。変わりなく流れるゆるーい時間の中にも、意外といろいろな楽しみがあるものです。妻の実家がある愛知に拠点を移したフリーライターの大宮冬洋さんが、結婚7年のDINKS夫婦の週末時間をリアルにつづります。今回は番外編。夫婦の毎年の恒例行事、香港旅行のお話です。

 「冬洋くんは頼りになるわけじゃないけど、一緒にいると何だか力がわいてくる。私が強くなるしかないから」

 外出の際、妻からこんなことを言われてもショックを受けなくなった。寛容になったわけではなく、「その通り!」と事実を認めているにすぎない。

 海外旅行の際、妻主導の傾向はさらに強まる。航空券やホテルの予約、現地での行動計画と実行、予期せぬ事態が発生した際の判断など、すべてお任せだ。僕がやるべきは、歩行する際に荷物を多めに持ち、途中で不機嫌にならないことの2点のみ。妻が「私がしっかりしなくては」と思うのも無理はない。

「定点観測」している香港へ出発、しかしその前日…

 現在は愛知県内で家業の工場を継いでいる妻。東京での会社員生活をやめて愛知に戻る前、半年ほど中国・深センで住み働いていた。日系企業の下着検品工場で事務作業のお手伝いをしながら、中国人の女性従業員たちとも仲良くやっていたらしい。週末の気晴らしはお隣の香港に渡って遊んでいた。

 妻はその半年間が人生最高に楽しかったと振り返る。帰国後も、お世話になった人を訪ねることを名目にして、香港と深センを「定点観測」する旅行を続けてきた。2012年に彼女と結婚した僕も毎夏同伴している。

 出発予定は8月13日の朝。この日程でピンと来た読者の方もいるかもしれない。デモ隊が香港国際空港を占拠した翌日である。僕たちは朝9時半の便で香港に向かう予定だったが、予想通り遅延。今日中に出発できるかも分からないという。

行きの飛行機はまさかの11時間遅れ。それでも香港に行きたい!
行きの飛行機はまさかの11時間遅れ。それでも香港に行きたい!