家計を強くし、将来に備えるために欠かせないのが、社会保障の仕組みを理解することです。現在の社会保障制度がベースにしているのは30年以上昔の昭和時代のライフスタイル。支え合いが基本の社会保障制度について、現代に働く人が知るべきことをファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんが解説します。

 コロナ禍においては、人との接触を極力減らし一定の距離を取ることが推奨されていますが、一方で家族との時間をより楽しむための消費が増えたり、オンラインでつながれる飲み会や催しが盛んになったりしています。また自粛モードで客足が遠のいた飲食店の料理をテークアウトで応援したり、観光地をバーチャルで回ったりと、新しいビジネスも芽吹いています。そういう姿を見ていると、やはり人間は支え合って生きているのだと感じます。

社会保障制度は日本人の「行動変容」が生み出した

 実は世の中の支え合いの仕組みをしっかり理解することは、人生をより豊かに生きるための資産作りにつながる行動だったりします。なぜならば、社会のセーフティーネットは、私たちが支えている「共助」であり、その領域をしっかり認識していれば「自助」としてこれから作るべき資産や、自分ですべきことを明確にしやすくなるからです。

 共助で既にある程度の準備がなされているにもかかわらず、いたずらに自助にお金を割いているケースもものすごく多いですし、逆に共助が前提とするモデルケースとは違う生き方を選んでいるのに、自助が不足している方も少なくありません。

 つまり、多様な生き方が当たり前となった現代では、自らが共助の支え手であるという自覚を持ち、さらには共助の仕組みを知った上で、自分はいかに備えるか、蓄えるかという自助を考える必要があります。

 まず現代の社会保障制度は、日本人の「行動変容」から生まれた支え合いの仕組みだということを理解しましょう。つまり制度は時代に伴ってさらに変化すべきものですし、変化させるのも支え手である私たちの行動なのです。

企業戦士として定年まで勤め上げる…昭和の働き方が現在の社会保障制度の前提に残る
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