不安はあるけど特に何も対策をしていない……。多くの人が言うのが老後の備えです。老後家計の収支が安定すれば、老後の備えはかなりシンプルになります。年金制度の改正を利用しながら収支安定のタイミングをはかる考え方を、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんが教えます。

 筆者はファイナンシャルプランナーとして、ライフプラン相談をお受けしていますが、貯蓄の残高にかかわらず相談者の多くが口にされるのが「老後が不安だ」という言葉です。

 そこで「ご自身の老後に向けて対策を取られていますか?」と伺うと、「何から手を付けてよいのか分からず何もしていません」と答える方がほとんどです。課題が分かっているのに対策を取っていない部分は、後に必ず弱点になります。なぜ取り組めないのでしょうか。

「老後の備え」がいつも後回しになる理由

 昨年は「老後2000万円問題」が取り沙汰されました。もし老後の対策が「60歳までに2000万円を準備すること」であれば、現在40歳なら月8.3万円、現在50歳なら月16.6万円の積み立てを始めればいいことになります。

 しかし問題はそう簡単ではありません。なぜなら、誰もが「自分の寿命がいつ尽きるか分からない」ので、いくらためたら十分なのか分からないためです。つまりお金をいくらためても、体の寿命より先にお金が尽きてなくなってしまう可能性を考えるとつい対策を後回しにしてしまうのです。

 では、これを解決するにはどうしたらよいのでしょうか。体の寿命が尽きる時期と、お金(経済的な蓄えや収入)の寿命が尽きてなくなる時期がぴったり合うようにするのが理想です。

肉体的な寿命と経済的な蓄えや収入の寿命が同じなら理想的。お金の寿命が先に尽きてしまうのは不安
肉体的な寿命と経済的な蓄えや収入の寿命が同じなら理想的。お金の寿命が先に尽きてしまうのは不安