時間に追われる忙しい毎日も、仕事でうまくいかないことがあったときも、「あの人」のことを思えば頑張れる…。いくつになっても「好き」は私たちにポジティブなパワーを与えてくれます。何かと責任を負う場面が多くなった今のほうが、日常とは別の世界にいる誰かを愛で、夢中で追いかけるひとときがより尊さを増すのではないでしょうか。ARIA世代の女性たちが、大好きな「推し」への愛をたっぷりと語ります。

 「ずっと夢を見て~」……コンビニのCMソングとして、全国の老若男女の耳になじんでいるポップなメロディーと独特の歌声。声の主は、2009年に58歳で亡くなったミュージシャン、忌野清志郎。亡くなって10年たつとは思えないくらい、CMをはじめ映画の主題歌など、彼の楽曲を耳にする機会は今も多い。金融系の会社で働く吉田智慧さんにとっても、清志郎は「生きているときと変わらないくらい、当たり前にいる存在」だという。

「いろんな音楽を聴くけれど、忌野清志郎の存在は特別」と話す吉田智慧さん。着ているのは、清志郎のデビュー35周年のときに発売されたスカジャン
「いろんな音楽を聴くけれど、忌野清志郎の存在は特別」と話す吉田智慧さん。着ているのは、清志郎のデビュー35周年のときに発売されたスカジャン

同級生にLPレコードを借りてドはまり

 吉田さんのファン歴は実に40年近く。出会いは清志郎がRCサクセションのメンバーとして活動していた時代にさかのぼる。「中学2年生のときに、隣のクラスの同級生にLPレコードを借りてドはまりしました。一番引かれたのは声と、当時としては衝撃的なルックス。もちろん曲も好きで、特にギターの音がすごかった。それからは自分でレコードを買ってきてはカセットテープに録音して、ずっと聴いていました。友達にも好きな曲を集めては『はい、ミックス』みたいにあげたりして

 吉田さんは小学生のときからロックが好きで、LAZY(レイジー)、ツイスト、サザンオールスターズといった日本のバンドやビートルズを聴いていた。清志郎と出会った後も、米米CLUBやBO GUMBOS(ボ・ガンボス)、英国のJudas Priest(ジューダス・プリースト)やIRON MAIDEN(アイアン・メイデン)など、学生時代から社会人になって今に至るまで、その時々に様々な音楽を好きになったという。そんな吉田さんの人生の中で、途切れることなくずっと追いかけ続けたのが清志郎だった。