時間に追われる忙しい毎日も、仕事でうまくいかないことがあったときも、「あの人」のことを思えば頑張れる…。いくつになっても「好き」は私たちにポジティブなパワーを与えてくれます。何かと責任を負う場面が多くなった今のほうが、日常とは別の世界にいる誰かを愛で、夢中で追いかけるひとときがより尊さを増すのではないでしょうか。ARIA世代の女性たちが、大好きな「推し」への愛をたっぷりと語ります。

 今から5年前の2015年、世間の話題を集めたテレビアニメが誕生したのをご存じだろうか。テレビ東京で深夜に放送された『おそ松さん』。赤塚不二夫の名作『おそ松くん』に登場する六つ子たちが大人になった姿を描いたギャグアニメだ。グラフィックデザイナーで2児の母、梅津ミスズさんはそんな『おそ松さん』にはまった一人。中でも六つ子の3男、チョロ松推しだという。

梅津ミスズさんは『おそ松さん』のチョロ松推し。「六つ子それぞれにテーマカラーがあって、チョロ松は緑。今日のスカートはチョロ松カラーを意識してみました!」
梅津ミスズさんは『おそ松さん』のチョロ松推し。「六つ子それぞれにテーマカラーがあって、チョロ松は緑。今日のスカートはチョロ松カラーを意識してみました!」

大人になり遠ざかっていたアニメ 深夜の授乳を機に「再会」

 20代前半になったおそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松の六つ子は全員が「ニートで童貞」。幼なじみのトト子やチビ太、「シェー」でおなじみのイヤミといった懐かしい面々も登場し、現代を舞台にパロディーあり下ネタありのドタバタなストーリーが繰り広げられる。17年からはテレビシリーズ第2期が放送され、19年には映画も制作。そしてこの10月からは第3期がスタートした。

 子どもの頃は漫画家に憧れ、アニメやゲームも好きだったという梅津さん。「漫画家は食べていくのが大変だし、デザインの道に進んで仕事が軌道に乗ったら漫画を描こう」という現実的な将来設計のもと、美大に進学。社会人になると仕事が忙しく、アニメからは10年以上遠ざかっていたという。

 再び見るようになったのは、結婚して長男を出産した2012年。深夜の授乳中に何となくテレビをつけて、その時々にやっているアニメを楽しむようになった。

 広告制作会社や印刷会社の社内デザイナーとして働いていた梅津さんは、結婚を機にフリーランスに。子育てとの両立が軌道に乗ってきた頃に『おそ松さん』が始まるという情報を知り、「声優さんも豪華だし、これは絶対面白そうだなと」。期待して見た第1話の印象は?

 「カット数が多くて登場人物もよく動く。それでいて作画は安定していて、これはアニメーターさんがすごく頑張ったんだろうなあ、ぜいたくだなあと思いました」。なんとも美術畑の梅津さんらしい着眼点!