時間に追われる忙しい毎日も、仕事でうまくいかないことがあったときも、「あの人」のことを思えば頑張れる…。いくつになっても「好き」は私たちにポジティブなパワーを与えてくれます。何かと責任を負う場面が多くなった今のほうが、日常とは別の世界にいる誰かを愛で、夢中で追いかけるひとときがより尊さを増すのではないでしょうか。ARIA世代の女性たちが、大好きな「推し」への愛をたっぷりと語ります。

 ライトアップされたステージの上で華やかに繰り広げられる歌や踊り、お芝居……劇場空間には、めくるめく非日常の世界を作り上げる表現者たちのエネルギーが満ちている。金融系の会社で働く尾崎さつきさんは、そんな舞台の魅力に引き付けられ、長年劇場に通う一人。中でも15年以上追い続けているのが、ダンサー、歌手、俳優と多方面で活躍する東山義久さんの舞台だ。

東山さんがリーダーを務める「DIAMOND☆DOGS」のグループ内ユニット「VELVET CRAZY NIGHT」のパーカーを着て、照れながらポーズを取ってくれた尾崎さつきさん
東山さんがリーダーを務める「DIAMOND☆DOGS」のグループ内ユニット「VELVET CRAZY NIGHT」のパーカーを着て、照れながらポーズを取ってくれた尾崎さつきさん

柔軟で印象的な踊り 手脚の動きに残像が見えた

 昨年デビュー20周年を迎えた東山さんは、最初にダンサーとしての活動で注目された。尾崎さんが東山さんと出会ったのも、2003年に見たダンス公演「DECADANCE」だった。

 「以前からミュージカルや、岸谷五朗さんと寺脇康文さんの演劇ユニット『地球ゴージャス』、今村ねずみさんが主宰する『THE CONVOY SHOW』の舞台をよく見に行っていました。私が好きな作品って、群舞の要素が多いんです。集団の踊りは見ていてすごく楽しそうだし、ぐっとくる迫力がある。それで踊りがメインのステージも見てみたいと思って、ダンス公演を見に行くようになりました。『DECADANCE』も、名前をよく耳にする個性豊かなダンサーがたくさん出演するということで、興味を引かれたんです」

 初めて見た東山さんの踊りに尾崎さんの目はくぎ付けになった。「腕が長くて体がすごく柔らかくて、本当に印象的な踊り方をされていました。手脚の可動域がなにしろ広くて、腕や脚を勢いよく振り回すと残像が見えるんです。それが目に焼き付きました

 見たのは千秋楽前日の公演。もう一度見たくなった尾崎さんはダメ元で翌日も会場へ足を運び、当日券に並んだ。「そうしたら、たまたまチケットを余分に持っている女性に『よかったら一緒にどうですか?』と声をかけられたんですよ。ありがたくお誘いを受けたら、なんと最前列。食い入るように東山さんの踊りを見ていました」