時間に追われる忙しい毎日も、仕事でうまくいかないことがあったときも、「あの人」のことを思えば頑張れる…。いくつになっても「好き」は私たちにポジティブなパワーを与えてくれます。何かと責任を負う場面が多くなった今のほうが、日常とは別の世界にいる誰かを愛で、夢中で追いかけるひとときがより尊さを増すのではないでしょうか。ARIA世代の女性たちが、大好きな「推し」への愛をたっぷりと語ります。

 「40代になって『再会』したときに、ああ、やっぱり普段自分が思っていることと、藤原さんが大切にしていることって同じだな、だから昔から好きだったんだと改めて気づきました」

 大阪でフリーランスの薬剤師として働く岡下真弓さんの推しは、ヘアメイクアップアーティストの藤原美智子さん。長年にわたって美容界の第一人者として活躍し、近年では自然体のライフスタイルもARIA世代をはじめ多くの女性たちから支持されている。「健康と美容は仕事をする上でずっと追求しているテーマ。藤原さんは私のライフワークの師匠だと勝手に思っています」

藤原美智子さんへの思いを、Zoomを使ったリモートインタビューで熱く語ってくれた岡下真弓さん。著書には共感する言葉がたくさんあり、いつ読んでも楽しいという
藤原美智子さんへの思いを、Zoomを使ったリモートインタビューで熱く語ってくれた岡下真弓さん。著書には共感する言葉がたくさんあり、いつ読んでも楽しいという

化粧品メーカーの研究員としてジレンマを感じた20代

 岡下さんが最初に藤原さんのメイクに引かれたのは20代の頃。もともと美容に関心があって化粧品メーカーに就職。商品開発の研究員として働く中で、トレンドを知るためにいろいろなファッション誌に目を通していた。「数々の著名な方がいらっしゃる中、親近感を覚えたのが藤原さんでした。当時のメイクの主流は眉が太くて意志の強い感じか、『合コンのときはこれ!』みたいないわゆるモテメイク。そうした中で、藤原さんのメイクは一貫して透明感のある女性の美しさを表現していました」

 「売れるもの」より「女性が美しく見えるもの」を提供したいという思いが常にあった岡下さん。しかし会社員としては当然、売れるものを作らなくてはいけない。「今ならもちろん分かるのですが、当時は若さもあって、流行ありきでものを作るというのがどこかでふに落ちなくて。結婚して夫が転勤することになったのを機に退職しました」

 その後夫の海外赴任についてタイのバンコクへ。生まれたばかりの娘を連れ、言葉の通じない不慣れな土地での生活の支えになったのは、定期購読で日本から届く女性誌だった。「そのときも藤原さんのメイクを見て、『そうそう、これこれ!』と思ってお手本にして。メイクって自分で自分をきれいにすることで、モチベーションを高めるものでもあるんですよね。おかげで気持ちが落ち込むことなく過ごすことができました」