大学時代に宝塚にはまるも、一時は観劇から遠ざかった

 松井さんと宝塚との出合いは1994年、大学時代に遡る。「寮で知り合った友人が宝塚が好きで、涼風真世さんのトップお披露目公演『ベルサイユのばら オスカル編』のライブCDを貸してくれたんです。涼風さんは既に退団していましたが、歌が本当に素晴らしくて、それから毎日のように聴いていました。耳から宝塚にはまるって、すごく珍しいパターンかもしれないですね」

 1年後には真矢みきさん(当時)のトップお披露目公演『エデンの東』で観劇デビューを果たし、天海祐希さんのサヨナラ公演『ME AND MY GIRL』には3回足を運んだ。そして、演目として一番夢中になったのが、宝塚の代表作の一つ、『エリザベート』。「一路真輝さんのサヨナラ公演だった雪組に続き、星組、宙組の公演も鑑賞。いろいろ見た結果、初演の雪組公演が自分の中では完成形だったなと満足してしまい、そこで宝塚から離れてしまったんです」

 就職、結婚、転職、育児とライフステージが変化する中で、20代後半から30代は観劇からすっかり遠ざかる日々。ただ、大好きな『エリザベート』だけは、再演されるたびにDVDを購入して自宅で鑑賞していた。「子育てが少し落ち着いてきた頃、涼風さんや天海さんみたいに、熱心に応援できる人が欲しいなと思って探すように。でも、DVDを見ては『いなかったな』の繰り返しでした」

 そんな松井さんが18年ぶりに観劇を再開したのは2017年のこと。「観劇を休んでいた時期は、大好きな涼風さんの退団公演だった『グランドホテル』のライブCDも繰り返し聴いていました。さまざまな人間ドラマが交錯する切ないストーリーも楽曲も素晴らしく、仕事でつらいことがあったときにも勇気づけられる作品でした。それが月組で初めて再演されると聞いて、見に行くことにしたんです

 実はこの再演舞台に美弥さんが2番手スターとして出演していたのだが、音だけで聴いていた演目を見られた感動があまりに大きく、その存在を意識することはなかったという。美弥さんに衝撃を受けたのは、翌2018年に見た『エリザベート』だった。

宝塚時代の舞台写真も、退団後のアーティストとしての写真もスタイリッシュ。「美弥さんは歌も演技も余韻があって、知っている作品でも違う解釈をくれるので、見ていてとても楽しいです」
宝塚時代の舞台写真も、退団後のアーティストとしての写真もスタイリッシュ。「美弥さんは歌も演技も余韻があって、知っている作品でも違う解釈をくれるので、見ていてとても楽しいです」