塩田さんには野望がある。それは、「一之輔さんより長生きすること」だ。

 「一之輔さんの落語は全部聴き続けたい。でも私が先に死んじゃったら、その機会を逃してしまうことになります。それに一之輔さんとは同学年で、勝手にご縁も感じていて。健康で長生きして、『お母さんニワトリ』を最後まで追いかけますよ!」

Message from 春風亭一之輔
写真/キッチンミノル
写真/キッチンミノル
 噺家になって18年ですが、勉強会を始めた前座時代、お客さんはおじさんやおじいさんばかりでした。それがここ3、4年で、女性が増えた印象です。いろんな層が落語を聴きに来てくれるようになったのはうれしいですね。

 落語は、ハードルが高そうで全然高くないところが魅力です。特定の噺家を目当てにお客さんが集まる独演会と、いろんな人が出演する寄席とではまた雰囲気が違って、独演会が名湯の旅館に泊まりに出掛けるようなものだとしたら、寄席は足湯に浸かる感じでしょうか。ふらっと来て、だらーっとした空気を楽しんで、嫌になったらすぐ出ちゃえばいい。

 僕はへそ曲がりで期待されるのがあまり好きじゃないんで、どちらかというと寄席でしゃべるほうが好きです。それで「なんか一之輔さんって人、面白かったね」と思ってほしい。

 お客さんに合わせようとはあまり考えていないんです。現代的な要素を入れたりするのも、どちらかというと自分が楽しくてやっていること。もちろんお客さんに笑ってもらわないといけないんだけど、まずは自分が面白くないとね。

 落語の中に出てくる人たちは、貧乏でも、モテなくても友達がいなくても、「まあしょうがないよね、でも何とかなるよね」みたいな感じで生きています。毎日頑張っているARIA世代の女性の皆さんにも、落語を聴いて「気を楽にして生きていこう」って思ってもらえたらいいですね。

取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) インタビュー写真/花井智子

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