大好きな「推し」がいる人たちに共通するのは、表情が生き生きとしていて、推しから受け取ったエネルギーが仕事への原動力になっていたり、物事に対する考え方が前向きだったりすること。「好き」は私たちにポジティブなパワーを与える…そこにはどうやら科学的根拠があるようです。というわけで今回は番外編。『日経ヘルス』の記事から、誰かに夢中になってワクワク、ドキドキするときに、脳内では何が起こっているのかを紹介します。

何かを達成したときに、脳内では「ごほうびホルモン」が放出

 アイドルや俳優のファンクラブに入って追いかける。夢中になって何かをコレクションする。好きな人に見てもらいたいと、ダイエットやおしゃれの研究に励む。フェイスブックにハマって、「いいね!」欲しさに、常にネタ探しのアンテナを立てる──。そんな「物事にハマッた」「夢中になった」という経験が誰でも一度はあるのでは? 「このように、物事にハマッたり、状況をより良くしようという原動力になるのがドーパミン」と説明するのは、脳科学者で京都大学名誉教授の久保田競さん。

 ドーパミンとは、脳の中で分泌される神経伝達物質で、“報酬系ホルモン”とも言われる。頑張って結果を出したときの達成感や満足感をもたらす物質だ。頑張る内容は、表現を工夫していいメールを書こうとか、ひと手間かけておいしいご飯を作ろうといった、ごく日常的なことで構わない。期待どおりの結果でも分泌されるが、期待以上の結果が出たときのほうが分泌量は上回る。

 「ドーパミンが出て快感が広がると、その喜びを求めて、新たな行動につながっていく。つまり、ドーパミンはやる気を巡らせ、前向きな好循環を生むガソリンとしても働いている」(久保田さん)

 目標に向かって行動し、目標を達成するとドーパミンが出て、それでまたやる気が出て、新たな目標につながる、という良いサイクルが出来上がるわけだ。しかも、「ドーパミンは、分泌した回数が多いほどよく出るようになる」と久保田さん。

 このドーパミンが、ますます競争が激化する現代社会を生き残るカギになる、という見方もできるとか。どんな仕組みになっているのか、さらに詳しく解説しよう。