楽しい「ごほうび」が、ドーパミンサイクルを回す

 「ドーパミンは、行動を工夫したり、普段とは異なる刺激を受けたりすることで分泌量が増える」と久保田さんは説明する。つまり、マンネリな生活や、行動のワンパターン化を避けることが大事というわけだ。

 「朝食は毎日同じ内容という人も多いと思うが、たまにメニューを変えることがドーパミンの分泌を促すきっかけになる。ランニングや散歩も、いつもと違うコースを選んでみるなど、何か一工夫するといい」(久保田さん)

 分泌を促すきっかけは、必ずしも大きな刺激である必要はない。もっとも、どんなに刺激的なことでも、毎日同じように繰り返していたらダメ。刺激を刺激として受け止める感受性が鈍って、ドーパミンが分泌されにくくなるからだ。「毎日が日曜日だと、日曜日が楽しみでなくなるのと一緒」と姫野さん。「ただし、女性の場合、メイクやオシャレなど、ちょっとだけ自分の“外側”を変えることでもドーパミンは出る」と話す。

 ライブを見に行ったり、おいしいものを食べたりするなど「楽しい」「うれしい」という「ごほうび」に相当することを体験するのもいい。その体験で出たドーパミンが「また楽しいことを体験したい」というやる気スイッチを入れ、ドーパミンサイクルがうまく回りだすからだ。

 植物を育てたり、ペットを飼ったりすることでスイッチが入る人もいる。「自分が世話をしてあげなかったらダメだと思うことが頑張る目標になり、行動につながる」(姫野さん)。

 ただし、人からいいと勧められた方法が、自分に合うとは限らない。自分なりにやる気のきっかけになることを探したい。

 「ドーパミンを出すためには、材料となるたんぱく質をしっかりとっておくこと。また、脳をきちんと休ませるため、きちんと睡眠をとることも大切」と久保田さんは話す。

恋愛する以外にもこんなに! ドーパミンを出す方法

【ライブに行く】

好きなアーティストのライブに行くのはごほうび。興奮すればするほど「また行こう」と前向きに頑張れる。

【メイクする】

女性は外見を整えるとやる気のスイッチが入りやすい。毎日同じメイクではなく、シーンや季節ごとにメイクを変えるとなおいい。

【一人カラオケでシャウトする】

「大声で歌うだけでもいいが、上手に歌おうとすることがドーパミン分泌につながる」と久保田さん。上達すればそのうれしさでさらに分泌量アップ!

【チョコを食べる】

「チョコレートに含まれるカカオはドーパミン分泌を促す」と久保田さん。やる気と前向きさがアップするとか。

【この企画を成功させてやろうと思う】

絶対成功させよう、と思うことで「やる気」が生まれ、行動の原動力に。成功はさらなるやる気につながる。

【肉を食べる】

ドーパミンの原料となるのはたんぱく質。「オススメは肉を食べること」と姫野さん。肉食女子は恋愛上手が多いとか。

こんなことも大事!

  • ●バランスのいい食事
  • ●睡眠をしっかりとる
  • ●規則正しい生活をする
  • ●エクササイズをする
姫野友美
ひめのともみクリニック院長
ひめの・ともみ/心療内科医。九州大学医学部付属病院勤務などを経て、05年開院。日本薬科大学教授。医学系情報番組に出演するほか、脳と体のしくみ、その男女の違いなどに関する著書多数
久保田 競
京都大学名誉教授
くぼた・きそう/日本を代表する脳科学の権威。妻は「脳科学おばあちゃん」こと子育てアドバイザーの故・久保田カヨ子さん

取材・文/茅島奈緒深 イラスト/村澤綾香 構成/堀田恵美

日経ヘルス2013年1月号掲載記事を再構成

この記事は雑誌記事掲載時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります