その方はこう言いました。「子どもがいないから、犬を子ども代わりにかわいがっている。そう哀れまれるのが嫌だから」。そこまで考えてしまう人も実際にいます。

 子どもが欲しいと思わない人にも、また違う悩みがあります。「子どもが欲しいと思えない自分って、ちょっとおかしいのかな?」と自分を責めたり、世間から「人としてどうなの?」という目で見られるから、おおっぴらにはあまり言えなかったりする。たぶんまだ世間では「子どもを欲しいと思うことが正義」とか、「産むのが当たり前で幸せなこと」という意識が根強いから、声を発しづらいんですよね。

思いを共有することで、暗かった表情が次第に明るく

 人って、つらいことや言いづらいことには蓋をして、気付かないふりをしてしまうものだと思います。言葉にすることは痛みを伴うし、改めて自分の気持ちに向き合わなければいけない。しんどい作業ですけれど、そうすることで次に進めると思うんです。

 集まりに来てくれる人たちを見ていると、最初は暗い顔をしていたのが、何回か参加するうちに別人のように明るい表情に変わり、「新しくこういうことを始めました」「私もつらい人たちのサポートをしたい」などと言ってくれることも。やっぱり、人に話したり、他の人の気持ちを聞いたりするだけでも、いろんな気付きがあって、前に進めるんですよね。思いを共有して「自分だけじゃない」と思えること。それが大事なんだと思います。

取材・文/谷口絵美 くどうさん写真/花井智子 イメージ写真/吉澤咲子