これは不妊治療の先生と話したことですが、不妊治療って、自分で終わりを決めないといけないんです。でも病院によっては、可能性が低くても本人が望めば「もう一回やってみましょうか?」となったりする。諦めた先の選択肢や、気持ちの持って行き方のフォローをしてくれる病院はあまりありません。そんな中、卒業式みたいなことをやってくれるクリニックがあるという話を聞きましたが、素晴らしいですよね。こういうきっかけがあると、気持ちを切り替えて、次のステップに進みやすくなります。

子どもを持たない人に訪れる「未産クライシス」

 「産後クライシス」「産後うつ」といった話は少し前からいわれていますが、私はいろんな方のお話を聞いていて、「未産クライシス」や「未産うつ」もあるなと思っています。不妊治療をしていく中で、子どもに対する考え方に夫との温度差を感じ、諦めた後にそのまま離婚する人。産めなかった自分を受け入れられず、深刻なケースでは昼間外に出られなくなったという人もいます。

 私も最初はそこまでの気持ちが理解できていなくて、理由を聞きました。そうしたら、「ショッピングセンターとかで、どうしても小さい子がいる家族連れが目に入ってしまう。見るだけでも気持ちがヒリヒリするので、夜の時間帯しか出掛けられない」と。「妊婦さんを見ると嫌悪感を感じたり、ママチャリを蹴飛ばしたくなる衝動に駆られてしまう。でもそんな自分がすごく嫌です」という方も結構います。そういう思いを一人で抱えていたら、ますます自己嫌悪の悪循環に陥ってしまいます。

 あと、私は犬を飼っていますけれど、同じように犬と暮らすある女性に「一緒ですね」と話したら、飼っていることを人には言えないのだそうです。

「『産後クライシス』ならぬ『未産クライシス』もあるなと思っています」とくどうさん
「『産後クライシス』ならぬ『未産クライシス』もあるなと思っています」とくどうさん