涙を流しながら思いを吐露した女性たち

 とはいえ、いつまでもしゅんとしていても仕方がない。生来の探究心で「子どもがいない人生ってどうなんだろう」ということが知りたくなり、いろいろ調べ始めたんです。そうしたら、あまりにも情報がないことに気付きました。

 子どもがいない人たちだって居場所は欲しいはずだし、悩みもあるはず。それで、まずは子どもがいない人同士で集まりませんか? と呼びかけました。最初は15人くらいが集まり、子どもがいないことになった経緯や今の気持ち、世の中に対して思うことを話してもらった。そのときに初めて、「子どもがいない人のリアルな本音」に接したんです。

 子どもがいない人は職場や友人の中にもいたりしますが、センシティブな問題なので、立ち入ったことまではなかなか聞けないですよね。一人ひとりの話を聞くうちに、「これは私が思っている以上に、みんなすごく傷ついたり、いろんな思いを抱えたりしていたんだ」ということが分かってきて、衝撃を受けました。しかも、多くの人が話しながら、途中から涙を流していたんです。単に「子どもがいない」というだけではとても済まされないことだと思いました。

 まだまだ長い後半の人生、先が見えずに不安な気持ちでいる彼女たちが、どうしたら前向きになってくれるだろう。彼女たちの気持ちをすくい上げて世の中に発信することが、私の使命なんじゃないか。そんな思いで「マダネ プロジェクト」は始まりました。

取材・文/谷口絵美 くどうさん写真/花井智子