「産まない」と「産めない」は違うことを痛感

 焦っていたのは親のほうです。当時、長く付き合っている人がいたので、「あなたたちどういうつもりなの?」と両方の親からたびたびせっつかれました。とうとう彼のお父さんが出てきて、「僕はもうすぐ定年だから、どうか現役のうちに式を挙げてくれ」と懇願されたんです。親たちに背中を押され、というかほとんど突き飛ばされるようにして、急きょ式を挙げました。

 結婚を機に湘南に引っ越し、会社は辞めました。アパレルは毎日終電で帰るような激務。ここで一旦、自分がやりたいことを考え直したいと思ったんです。もともとトレンド情報を追いかけるのが得意だったので、2002年に「流行りもの情報サイト kiteru」というウェブサイトを立ち上げました。

 結婚しても、子どもはなかなかできませんでした。当時は妊活という言葉もなかったし、フリーになって自分の力を試そうと仕事に軸足を置いたら、結構依頼も来て忙しくなってきた。そうやって35歳が過ぎ、40歳が目前になって、「あれ、私もしかして子どもがいない人生になるのかな」、そんな考えが頭をよぎりました。

 思い描いていた人生とは少し違うけど、それもありかな……そんなふうにうっすら思い始めた矢先、子宮の病気が発覚して、子どもを産めないことが決定的になりました。

 「産まない」と「産めない」は違う。今までは少ないながらも可能性があったものが、ゼロパーセントになった。その事実を突き付けられて、「ああ、何で今まで真剣に向き合わなかったんだろう」と、大きなショックを受ける自分がいました。

結婚当時は妊活という言葉もなく、仕事に没頭するうちに40歳が目前になっていた(写真はイメージ)
結婚当時は妊活という言葉もなく、仕事に没頭するうちに40歳が目前になっていた(写真はイメージ)