任せるときは任せる バカをやるときはとことんバカに

中川 でも私も、その場その場では、悩みながら決断をしてきました。キャリアや子育てと仕事の両立などで悩んでいる女性の話を聞くと、やってみる前に「きっとできない」と諦めてしまっていることが多い。家族に聞いてみた? 友人に聞いてみた? 誰かが「ダメ」って言わないなら、まずはやってみたらいいんじゃない? そんなふうにアドバイスしています。

 子どもは二人とも社会人になりました。「普通のお母さんと違う」ことに、いいのかなと悩んだことはあります。海外に行ったときは娘はまだ3歳で、ぼんやりとした記憶しかないようですが、その後の大阪への単身赴任は2人の子どもが思春期のころ。でも話せば応援してくれましたし、娘は「普通のお母さんは望んでいないから」と。私がこんなだったためか、子どもの親離れ、自立が早かったような気がします(笑)。そして娘は今、ホテル業界で働いています。母親が憎かったら同じ仕事は選ばないと思うので、ほっとしています。

―― 管理職として意識していることはありますか。

中川 女性初の総支配人となり、今は執行役員として仕事をしています。部下には年上の男性もいますが、味方に付けるしかないと思っています。積極的に任せる、頼る、ということを意識しています。あとバカをやるときはとことんバカをやる。怒るときははっきりと伝え、ネチネチしない。「あっさりしているのがいい」と部下にも言ってもらえます。

 私は現場が長く、総務・経理・人事などの経験がありません。コンプライアンスや会社法など、上場している企業の執行役員として必要な知識を、必死に学びながら仕事をしています。政府も女性管理職向けの勉強会などを定期開催していて、それに参加したり。仕事の後なので時間的にはハードですが、同じ立場の人との交流もあり、刺激になっています。

取材・文/砂山絵理子(日経ARIA編集部) 写真/花井智子