「部長として、君にしかできないことをやってほしい」

中川 リーガロイヤルホテル成田を売却・清算することになり、リーガロイヤルホテル早稲田(現:リーガロイヤルホテル東京)に異動することに。長く成田に勤めることになるかなと自宅を買ったのに、早稲田まで片道2時間半かけて通うことになりました。早稲田では営業企画を担当しました。

―― その後、再び単身赴任を経験されたのですよね。

中川 そこで7年ほど働いた私に、ある日社長から呼び出しの電話がありました。「人事のことだ」と覚悟を決めて出向くと、「リーガロイヤルホテル(大阪)の宿泊部長にならないか」と。宿泊部は宴会、ブライダル、料飲と並ぶ、花形の部署。そこの部長となれば出世です。もちろん女性初。これまで、こういう人事を断る男性はいなかったでしょうし、断る場合は辞職も覚悟するのが暗に常識でした。宿泊部での経験がほとんどない私に部長ができるのか、しかも単身赴任で……と不安もありました。

 社長からは「君に宿泊のプロになってと頼んでいるわけではない。部長として、君にしかできないことをしてほしい」との言葉。入社する従業員の半分は女性なのに、女性の離職率はとても高い。若くて能力があって夢がいっぱいの女性従業員のロールモデルになりたい。出産しても戻ってくる人が増えてほしい。それが使命だと感じ、「まずはやってみよう」と引き受けました。

―― 「子どもが小さいときの海外赴任」など、中川さんのいわゆる「バリキャリ」具合に、後輩などから「私には無理……」と言われてしまうことはありませんか。

中川 私のキャリアを話すと「あの人は違うから」「特別だから」と言われることはあります。上司に恵まれて、親や配偶者に恵まれて、と思われてしまうんです。

「若くて能力があって夢がいっぱいの女性従業員のロールモデルになりたい。出産しても戻ってくる人が増えてほしい」――それを使命と感じ、奮闘している
「若くて能力があって夢がいっぱいの女性従業員のロールモデルになりたい。出産しても戻ってくる人が増えてほしい」――それを使命と感じ、奮闘している