前回は終わらない「自分探し」の背後にある、自覚なき不安感について臨床心理学者の河合俊雄さんに話を聞きました。河合俊雄さんの父で、日本人初のユング分析家であった故・河合隼雄さんは『中年クライシス』で「中年期特有の不安感」を論じました。最終回はその「中年期特有の不安感」と、いまどきの中年クライシスを比較しながら、子育てが一段落し、パートナーと向き合って生じる軋みと「自分探し」の関係について一緒に考えていきます。

(上)河合俊雄 自分は必ずしも、自分の内にはいない
(中)河合俊雄 自覚のない不安感と「自分探し」の罠
(下)河合俊雄 いまどきの「中年クライシス」と夫婦の危機 ←今回はココ

パートナーと改めて向き合い、感じるクライシス

―― 前回は自覚のない不安について話を聞きました。かつて河合隼雄さんが『中年クライシス』(1993年)で描いた中年期特有の不安感と、いまどきの中年クライシスは同じでしょうか。改めて読み返してみると、この本に登場する40代、50代がものすごく大人に思えたんです。

河合俊雄さん(以下、敬称略) そうでしょう。いまの40代、50代より大人だし、シリアスですよ。昔ほど葛藤の意識を持たなくなっている、いまの40代、50代が読んでも「ピンと来ない」という人も多いと思います。

―― とはいえ、子育てが一段落して、パートナーとの関係性を見直す中で「自分探し」がはじまる人は多い。それは昔もいまも変わらないようです。

河合 『中年クライシス』で河合隼雄はこう書いています。「子育て中は併走しているが、ある時期が来ると向かい合わないといけない。それが中年クライシス」だと。ただ、これは日本文化の特徴のひとつと言っていいかもしれませんが、パートナーの大切さって、人によってとても温度差がありますよね。パートナーの存在がものすごく大事な人もいれば、そんなに大事じゃない人もいます。

 誰もが必ずしも「他者が大事」とならなくてもよい。とはいえ、「他者がいる」というのは自分を知る上で、すごく大事なことではある。

 ただ、みなさん男女のモデルを西洋に倣って「向かい合うこと」を前提に考えすぎているのではないかと感じます。

自分を知る上で、「他者がいる」というのはすごく大事なことだと語る河合俊雄さん