思春期の息子とのぶつかり合い 故郷に戻るという選択

―― 不登校の息子さんとどう向き合ったのですか。

野田 思春期になれば「自分は何者なのか」と誰しも考えるようになります。息子の場合、「自分はなぜここにいるんだろう」と自分の複雑なおいたちと向き合いながら、さまざまな疑問や葛藤を抱えていました。私も「うちの子に限って不登校になるなんて」という思いもあり、不登校は一過性のものだと信じたかった。と同時に「学校に行かないなんて考えられない」という自分の固定観念に慌てふためくことも。「学校に行きなさい!」と毎日ガミガミ叱りつけては、自己嫌悪に陥ることの繰り返しでした。

「息子は『自分はなぜここにいるんだろう』と複雑なおいたちと向き合いながら、さまざまな疑問や葛藤を抱えていました」(C)PIXTA
「息子は『自分はなぜここにいるんだろう』と複雑なおいたちと向き合いながら、さまざまな疑問や葛藤を抱えていました」(C)PIXTA

 ちょうど自分の更年期と重なり、いわゆる不定愁訴の症状が表れ、眠れない日々が続きました。八方塞がりの状態に加え、故郷の母が一人暮らしを続けるのが難しくなったこともあり、「環境を変えよう」と福岡に戻ったんです。

―― 環境を変えて、好転しましたか。

野田 息子は学校に行き始めたらまた不登校になったりと、最初はうまくいきませんでした。私の母とも折り合いが悪いときがあり、実家のそばにアパートを借りて、私と息子の二人で暮らす決断をしたりもしました。転機が訪れたのは息子がフリースクールの先生と出会ってから。毎日通わなくてもいい。「ねばならない」の気持ちから解放されたのは実は息子だけでなく、私もでした。自分がそれまでいかに「普通の暮らし」にとらわれて、力んでいたかと思い知らされましたね。