長い人生を歩んでいれば、どんな人でも、思い通りやれたことばかりじゃなくて、そうじゃなかったこともあるだろうし、成功だけじゃなくて失敗もたくさんあるでしょ。でも、それは全部「経験」という名の財産。たとえどんなひどい経験であれ、その経験を乗り越えてここに来ているんですよ。そこに価値がある。つまり、「成功してることが過去にたくさんある」ことだけが価値じゃないってことです。

 そもそも、成功体験しか語らない人は絶対に怪しい。そういう人に会うと「んなわけねーだろ」っていつも心の中でツッコミを入れてる。成功体験を語らなきゃ認めてもらえない、対等に見てもらえないという思い込みを持っている人は多いけど、実際はそんなこと全然ない。人が聞きたいと感じるのは、うまくいった話じゃなくて、断然うまくいかなかった話。

自分の歴史を黒く塗り潰さないで

 うまくいかなかったことをどう乗り越えたのか、どう消化しているのか・していないのか、それが「その人」を象徴するんですよ。だから、失敗した経験、やらかしちゃった経験こそ、隠さずにさらけ出したほうがいいと思う。そうすると、周りの人から見て、がぜんあなたという人物が立体的になって、あなたならではの魅力が生まれてくる。他の人もあなたに興味を持つ、もっと知りたいと感じるんです。

 そして、成功も失敗もひっくるめて「自分の経験」として伝えていくことで、周りの人や若い人たちの中で挑戦を迷っている人たちの背中を押すことができるんじゃないかとも思う。いいことばかりじゃなくて「私はやってみて大失敗しちゃったんだけど、でも大丈夫。それが今につながっている」という話こそ、どんどん語ってほしい。

 「黒歴史」という言葉があるけど、自分の歴史をどうか黒く塗らないで。歴史は白と黒だけじゃなくさまざまな色を持っている。すべてが人生の彩りなわけですよ。だって、今までのすべての経験が今のあなたをつくっているわけでしょう? 大事なのはやらかしちゃった経験を黒く塗り潰すことではなくて、消化する、成仏させることなんです。