週1日、昼間だけオープンする桃源郷のような「昼スナックひきだし」。今日も真っ昼間から「意識高い系スナック」の紫乃ママの元に、悩めるARIA世代が心の潤いと福音を求めてご来店。グラス片手に、ナッツをつまみながらの脱力系お悩み相談…いやいや、特濃スナックトークが始まります。寄ってって!
紫乃ママ いらっしゃい。何、飲みます?
由香 最近すっかり弱くて……。ジンジャーエールをお願いします。今日は紫乃ママさんに相談したいことがあって。
紫乃ママ 紫乃ママ「さん」はやめてください(笑)。どうしたんですか?
由香 一般事務職のアラフィフって、この先、どうやってキャリアを積めばいいんでしょうか?
若手とキャリアを積んだミドル・シニアのはざまで…
由香 今の大手金融では、若い世代か、順調にキャリアを積んできたミドル・シニアにしか日が当たらなくて。その谷間にいる私のような40代後半、一般職には何のチャンスもない。ただ時間をお金に換えているだけの毎日です。会社の中での立ち位置が末端過ぎて、どこに存在価値を見いだせばいいのか……。
紫乃ママ 由香さんは新卒からずっと金融畑なの?
由香 いいえ、全然。私が卒業したときは就職氷河期で、最初に入ったのは小さな商社でした。ワンマン社長のブラック企業で雇用保険もないレベル。勉強を頑張ってなんとかW大に入ったのに文学部ではキャリア職も狭き門で、スタートでつまずいた感はありましたね。
紫乃ママ うんうん、そういう時代だった。生まれた年がちょっと違うだけで社会人スタートの天国と地獄が分かれるってほんとに理不尽よね。
由香 ブラック企業で体調を崩して27歳で結婚して会社を辞めたんです。この苦境から救ってくれるなら結婚相手は誰でもいいって感じでしたね。
紫乃ママ そう思ってすぐ結婚できるなんてすごいじゃない。結婚なんてセーフティーネットの一つだもの。良かった良かった。
由香 それが……私の母がいわゆる毒親で。結婚後もいろいろ介入してきて、夫が子会社に転属されたら夫へのダメ出しが激しくなり、関係がギクシャクしてしまったんです。夫と親の板挟みになって、結局32歳で離婚しました。
紫乃ママ あらら。そのとき、仕事はどうしていたの?
由香 子どももいなかったので結婚2年目からは派遣で働いていました。でも、派遣の収入だけでは苦しくて実家に出戻ったんです。そしたら今度は母から「出戻りなんて近所に恥ずかしい」と攻撃されて。
紫乃ママ 離婚の原因も元はといえばお母さんなのにね。離婚が恥ずかしいなんて、時代錯誤も甚だしい。恥ずかしくて悪かったですね、と紫乃ママ小さく叫びたいわ、まじで(編集部注:紫乃ママはバツ2)。
由香 そして今度は、山ほど見合い話を持ってこられて。最初は我慢していたんですけど、私の中で何かがプチンとキレたんです。36歳のとき、実家を飛び出してギリギリの家賃で一人暮らしを始めました。もうこの親に関わっていたら「一生自分の人生を生きられない」と思って。ところが家を出て半年後にリーマン・ショックで派遣切りに。同じ会社で3年も働いていたので、そんなに急に切られるとは思ってなかったんですけど。
紫乃ママ うわ、一難去ってまた一難。それでそれで?