赤坂の雑居ビルの一角にある桃源郷のような「昼スナックひきだし」。紫乃ママの元に、新著『女性の覚悟』を出版したばかりの昭和女子大学理事長・総長、坂東眞理子さんがご来店。真っ昼間からグラス片手に、特濃スナックトークが始まります。働く女性のパイオニア、坂東さんが説く、アラフィフ女性に必要な覚悟とは?

(上)坂東眞理子&紫乃ママ 女の人生後半戦に必要な覚悟は? ←今回はココ
(下)坂東眞理子 70代の私が見れば40、50代は前途洋々

紫乃ママ いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます!

坂東眞理子さん(以下、坂東) 本当にスナックなのね!

昭和女子大学理事長・総長 坂東眞理子さん
昭和女子大学理事長・総長 坂東眞理子さん
1946年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)入省。男女共同参画室長、埼玉県副知事、在オーストラリア・ブリスベン総領事などを歴任。2001年内閣府初代男女共同参画局長を務め03年に退官。57歳で昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長に就任。07年に同大学学長になり、著書『女性の品格』が320万部を超えるベストセラーに。14年理事長、16年から現職

紫乃ママ いつも大学でしかお会いしてないですものね(※編集部注:紫乃ママは昭和女子大のダイバーシティ推進機構アドバイザー)。よかったら一度、坂東さんも昼スナックのママになってみませんか? スナック「女の覚悟」、なんてどうでしょう。

坂東 みんな怖がって来ないんじゃない(笑)。

紫乃ママ いえいえ、坂東さんに叱られたい女性はきっと多いと思いますよ。うちは悩みを抱えたアラフィフのお客さんが多いんです。

女性は選択肢が多過ぎるから悩みがつきない

坂東 50前後の女性は本当に迷いが多いのよね。女性の人生は選択肢が多過ぎるから、自分が本当は何がしたいのか分からなくなる。「選択からの逃走」というか、自分で選ぶのが重荷になる。

紫乃ママ 確かにそうですね。昔は家庭に入って夫に養われるという分かりやすい構図だったんでしょうけど、今は選択肢が多い分、悩みも多そうです。だから、人生後半期をどう生きるかについて書かれた『女性の覚悟』に、めっちゃ共感しました!

坂東 ありがとう。「女性は自由でいいな」といわれるけど、女性自身はそんなに自由じゃないのよね。自由そうに見える人もいるけど、自分で限界を設けている気がする。

紫乃 今の50代は男女雇用機会均等法も出来て、働き続けられちゃった世代だから、ある意味ベルトコンベヤーに乗って会社にいたら、女性活躍という波が途中から来て勝手に盛り上がってきて。

坂東 氷河期世代が聞いたら怒りそうだけどね。よく、人を当てにするなっていうでしょ。でも、女性は人を当てにしてるほうがかわいいし、好感を持たれるというイメージがあって、それに自分が縛られているの。社会のアンコンシャスバイアスもあるけど、女性自身が「私は女なんだから」「私はもう50歳だから」「私はただの平社員だから」って。女性を下に見るような価値観を自分に投影している。

紫乃ママ それはほんとにもったいない。とはいっても日本って、特に女性は年齢に対する偏見が強くて、若さに価値があるっていう意識はいまだにありますよね。だから若い女性を象徴する「かわいさ」や「弱さ」を表現することが体に染みついて、「50歳になったら自分に価値はない」と自ら気が付かないうちに思い込まされているところがある。