赤坂の雑居ビルの一角にある桃源郷のような「昼スナックひきだし」。紫乃ママの元に、今日は40代で北欧に短期留学し、帰国後に転職した45歳の女性がご来店。真っ昼間からグラス片手に、特濃スナックトークが始まります。北欧での体験と、帰国後に感じたズレとは?
紫乃ママ あら、亜矢さん、久しぶり! 日本に帰国してたと聞いてたけど、何をしてたの? 中年海外留学の話も聞きたかったのよ。
亜矢 ご無沙汰してます。そうなんです。帰国して新しい仕事に就いたんですけど、なんだかまたモヤモヤしていて……。
スパルタな上司の元で、数字に追われる職場に疲弊
亜矢 半年ほど北欧に行ってました。本当はもっと長く滞在する予定だったんですけど、新型コロナウイルスの感染状況が厳しくなって、途中で帰らざるを得なくなって。
紫乃ママ そうかそうか。それは残念だったよね。でも、なぜ北欧だったの?
亜矢 教育系の仕事をしていたので、北欧の教育や高福祉社会に興味があったんです。「自由な教育」を調べていたら北欧にある全寮制の市民大学を見つけて「面白そう!」と。調べたら費用も意外と安くて、学費、住居費込みで1ターム(3~4カ月)で約40万円くらいだったし。仕事で限界を感じていたこともあって、新たな道を模索したいと思って。
紫乃ママ そうかあ。あの頃、かなりハードに働いていたものね。
亜矢 異動したばかりの頃ですね。異動先の部署には厳しすぎる上司がいて。社内政治や競争、売り上げばかりを考えて動かなければいけない環境に疲弊してしまったんです。仕事の内容は面白いかなと思って飛び込んだんですけど……。プライベートでも、30代で乳がんにかかり、完治はしたけど38歳で離婚。もっと自分で稼がなくちゃと無理をしてしまって。
紫乃ママ 自分がその職場に染まっていくのが嫌で、リセットの意味もあったと言ってたよね。でもさあ、40代で仕事を辞めて海外留学するって、なかなか決断できない人のほうが多いと思うよ。「MBA取得を目指す」とかでもないしさ。大きな決断だったね。
亜矢 安定していると動けないと思うけど、あのときの私は、どちらかと言うと押し出されるようにこの組織を離れたいという気持ちになっていたんです。自分を解放して、本来やりたかったことを見直す、リセットの機会にしたいなと思って。帰国後の仕事の当てはあったけど、行って感じたことを大事にしたくて、具体的な目標は決めずに行きました。英語もそれほど話せるわけじゃなかったんですが、なんとかなりました。
紫乃ママ それができる勇気ってやっぱりすごい! 留学先ではどんなことが印象に残っているの?