退職のきっかけになった2つの出来事
澤 これ以上副業を増やすと本業に支障が出るかな、と思っていたタイミングで2つの出来事があったんです。1つは新型コロナウイルス。もう1つは、あるSNS投稿でZoomをポジティブなトーンで紹介したら、「日本マイクロソフトの業務執行役員が、他社の製品を薦めた」っていう図式になってしまった。もちろんこれは完全に僕のミスなんだけど、こういうことが問題になってしまうなら、僕はもう組織にいないほうがいいと思ったのも事実。会社は好きだけど、もっと自由にテクノロジー全般を語れるようにして、自分のタグだけで生きていくことをしてもいいのかなと思った。
2019年には個人での活動を行う「圓窓」という法人を立ち上げて事務所も借りていたから、「すべての準備は整っていた」状態。コロナ禍で会社にも行けないし、仕事は自分の事務所で快適にできてるしね。
紫乃 会社にいる理由が段階的になくなっていったわけか。
澤 会社では同じポジションにもう9年いたから、次に行きたい部署とか、社外で行きたい会社があるか、20分だけものすごく集中して考えてみたけど、なかった。じゃあ、独立だ! と。後任も指名して「みんなで支えてあげてね」といって、「最高の23年でした。素晴らしい会社でした。ありがとうございました」と3行メールを送って終わり。
紫乃ママ 20分考えて、3行のメール(笑)。これまで準備してきた澤さんにとってはそれで十分だったんでしょうね。まさに理想的な辞め方。機が熟したんですね。辞めたっていうより、澤さんの中でフェーズが変わったんだ。
他人の物差しで測らない。「自分に合う単位」は?
澤 そう、リセットしてゼロにしたというより、「これまでとは使う単位が違うところに行く」という変化です。よく「会社で一生懸命働いても評価されない」っていうキャリア相談を受けるけど、その人の持ち味は例えば「長さ」で測るんじゃなくて、「重さ」や「広さ」、あるいは「速さ」とか、違う単位で測るほうがいいんじゃないかなと思う。だから、別の単位を使っているところに行けばいいと思うんだよね。
紫乃ママ そこを考えてない人って多いですよね。例えば「市場価値」みたいな言葉。自分の価値を年収だけで語る人もいるけど、大事なことはお金だけじゃない。「年収で測らなくてはいけない」って、すり込まれてしまっている。自分が大事にすることは何かを考えないで、他人の物差しで測っている人ってけっこういますよね。
澤 本当にそう。あと、似たような単位で比べてしまう人も多い。地方銀行に勤務する人が、都市銀行や外資の銀行に勤務する人とあれこれ比べても単位はあまり変わらない。そうじゃなくて、例えば銀行員が建築業界を見てみるとか、独立することを考えるとか。仕事や評価の単位が全く違うもので考えてみるほうがいい。新たな可能性が見えてきますよ。