転職も学び直しもだめ…嫁ブロックに諦めモード

田中 50歳時点で一度も結婚したことのない男性は23.4%ですからね。結婚しない人も増えている。僕も子どもが二人いるから分かりますが、いくら社会が少子化だ、なんとかしなければ、と叫んでいても、実際にはサポート体制がしっかり整っているわけではありません。自分が子どもをもってみて「できるだけ、お前たちで頑張れ」ということなんだと痛烈に理解しました。

 賃金でいうと40代前半が一番ひどい。その年齢はまさに就職氷河期世代で給料も上がりません。大学時代に思い描いていた40代、50代と全然違う。「話が違うだろ!」というのはこの世代の多くの男性が思っていることだと思います。

 会社は成果主義にシフトしているのに、子どもへの出費はかかる一方で、自分への投資に回す余裕がまったくないです。転職を考えても「今より給料がいいのか?」とまず妻に聞かれますし、大学で学び直したいなと思っても「その勉強はちゃんと元が取れるの?」と詰め寄られて、諦めました。「嫁ブロック」ですね。

紫乃ママ 「嫁ブロック」ね。よく男性から聞く。もうさ、相談する前から「これ、絶対ブロックされるわ」って忖度(そんたく)している男性たちも多いしね。

孝太郎 確かに僕らが就職する頃、上の世代はもっともらっていたなっていうのはありますね。ポストバブル入社の僕もこの20年で賃金ほとんど上がってないですから。

大きな夢を語らされ問題、無駄にあおられ問題!

田中 バブル時代というとすぐ「24時間戦えますか」というCMを思い浮かべますが、一方で高田純次さんが演じていた「5時から男」っていうCM、覚えてますか? 実は、バブル時代は企業戦士だけでなく、ブラブラしているだけのおじさんも存在できた時代なんです。今はそんなちゃらんぽらんな社員は許されません。経済の調子がよければ、ある程度の多様性は包摂されるんです。

 うちの妻は短大卒で、バブル期に入社しているので、その頃の楽しさをよく自慢されますよ。

田中 昔は40代でひとかどの人物になっていたはずなのに、今は50前になって先が見えてしまう。時代は変わってしまったんです。それにもかかわらず、男の子にはいまだに「大きな夢を語らされる問題」というのがあります。大人になったら何になりたいかっていう調査で20年前から男の子はずっと変わらず「スポーツ選手」が上位に。女の子は「ケーキ屋さん」。今どきの親は、心の中では「公務員」になってほしいと思っているのに、なぜか男の子は大きい夢を語らなくてはいけない風になっています。もはや高度成長期ではないのに男性はいまだに無駄にあおられ続けている。だからそのギャップが苦しいんです。

 僕は子どもの頃、作文で「将来は有名になる」って書いていました(笑)。最近、趣味のバンドに力を入れてるのも、そういうルサンチマンの噴出かもしれません。

田中 「なりたかった自分」と「なっていない自分」。50歳前後なら今の仕事の未来はほぼ見えてしまっていますから、その後をどう生きるか悩みます。女性は、逆にいまだに、例えば「東京で一人暮らしなんてダメだ」という親の足かせで地元に引き留められたりする。女性は押さえつけられてきたから、男性側の「あおられる怖さ」は分かりにくいかもしれませんね。

紫乃ママ その「男だから○○しろ」的なあおりは、最近の「女性活躍」の流れと似てる気がする。とにかく「女だから活躍しろー!」っていう雑なくくり。活躍なんて人に言われてすることでもないし、性別なんかではなくて、もっとパーソナルなものであるはずなのに。今までの男性に対するあおり、「男なんだからでっかい夢を」とかと同じような乱暴さでプレッシャーをかけてくる。

 女性たちはその雑さに辟易(へきえき)して心の中では「クソ食らえ」としたたかに思っていますけど、企業の中にいるとその波を受けざるを得ない場面も多い。ARIA世代は、男も女も、不景気と社会変化、そして「性別役割分業」の変化のはざまで、働き方やパートナーシップに悩み多きお年ごろですよね。なんか今日はしんみりしちゃったわ~。

後編では、話題が家事分担や夫婦関係へと展開していきます。

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妻への愚痴も不満もある。でも、老後の夢は夫婦仲良く!

取材・文/竹下順子 写真/洞澤佐智子 構成/市川礼子