男性に「働かない」選択肢はあるのか?

 そのくらいのことでパワハラフラグが立つなら、うちの会社なんて全員フラグ立ちますよ。昔は公開説教が当たり前で、上司から「お前、窓から飛び降りろ!」って言われたこともありました。

紫乃ママ はは。あったあった。金融機関に勤めていた同期の男性なんて、新人のとき、上司がキレて投げつけた灰皿(もちろんアルミのやつね)を避けたという理由でボコボコに怒られたとか言ってたもの。今それをやったら犯罪だよね。でも最近、本当のパワハラやセクハラと、敏感すぎるクレーマー社員からのクレームとの見極めが難しくなってると思う。企業もさ、社員に言われたら何か対処しないわけにいかないのよね。事実はお互いの信頼関係のほころびだったりするのに。孝太郎さんのパワハラ騒動は何歳のとき?

孝太郎 35歳ぐらいです。それからずっと禊(みそぎ)のつもりでエグい仕事にも耐えて成果を残してきました。今の上司は僕を評価してくれますが、人事では異動希望が通らない。このままずっと評価されないなら人生1回しかないんだし、違う会社で働いてみたいな……なんてね。モヤモヤしてますよ。50歳っていろいろ見えてくるタイミングだし。今更あくせくしても仕方ない気もしますが、このままずっとモヤモヤし続けるよりは今の会社から飛び出したいという思いが消えません。

田中俊之さん(以下、敬称略) 一度貼られたパワハラのレッテルが15年も続くなんて、すごい世界ですね。あ、横からすみません。田中と申します。それに男っていうだけで「40年も働き続けなければいけない」っていうのが当然になっているのはキツいですよね。

紫乃ママ こちら大正大学で男性学を研究している田中先生。『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社+α新書)はじめ多くの本も出してらっしゃる社会学の先生。私、先生が「男性学」を研究されているのを知ってからずっとひそかに追っかけをしていて、いつかお店にお呼びしたいと思ってたの。

 女の生きづらさって結局、男の生きづらさと密接につながっていて、表裏の関係だと思ってるの。先生はそこのところを社会学的観点から深く研究されていて、私も先生の本を読むたびに「そうそう! まさに」って首がもげそうなくらいうなずいてる。

田中 男性は20代で就職したら60歳まで仕事を辞めない、辞めちゃいけないという常識があまりにも強いじゃないですか。だから一度、「働かない」っていう選択肢まで含めて考えたら、なぜ自分はこの仕事をするのかはっきりするんじゃないかと思うんです。お二人は「無職」が頭をよぎったことはないですか?

一同 おお~、無職ですか!