赤坂の雑居ビルの一角にある桃源郷のような「昼スナックひきだし」。紫乃ママのお店に、グローバル企業の日本法人トップとして活躍する特別ゲストがご来店! 「ダイバーシティがない場所にはいかない」と事もなげに話す紳士に「こんな社長が日本にいたなんて…」と他のお客さんもいつの間にか話にくぎ付けに。紫乃ママとの軽快かつ深淵なトーク、必読です。

(上)アクサ生命社長 ゴルフは卒業、多様性のない場にNO ←今回はココ
(下)安渕社長&紫乃ママ 革新は辺境から、女性もまだ辺境だ!

紫乃ママ いらっしゃいませ。安渕さん、ご来店ありがとうございます!

安渕聖司さん(以下、安渕) 初めて来たけど、いい店ですね~落ち着くなあ。

アクサ・ホールディングス・ジャパン代表取締役社長兼CEO 安渕聖司さん
アクサ・ホールディングス・ジャパン代表取締役社長兼CEO 安渕聖司さん
1979年三菱商事に入社。90年ハーバード大経営大学院修了。99年リップルウッドの日本法人立ち上げに参画。UBS証券を経て2006年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)グループに入り、1年後にGE キャピタル・ジャパン社長兼CEOに。19年から現職。著書に『GE世界基準の仕事術』(新潮社)など。さまざまなNPO活動に関わる一方、歌舞伎、宝塚歌劇、文楽、大相撲など多彩な趣味を持つ

人とどれくらいフラットに付き合えるか

紫乃ママ 新聞の書評で『昼スナックママが教える 45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』を紹介してくださって、ありがとうございました。感激しちゃって、もう。でも自分で言うのもなんですが、なんでまたこの本を?

安渕 以前、昭和女子大学の関係でお会いしたとき、紫乃ママが昼スナックをやっていると聞いて、面白いなと思っていたんですよ。本を読むと話の引き出し方が上手だし、否定しないで寄り添いながら、相手の中にある回答を見つけてもらうまでが絶妙で面白くてね。私も経営者として、社員がどんな悩みを持っているのか興味があるから。

紫乃ママ その記事をFacebookで紹介してくださった際に安渕さんが「人の力を引き出したいのは僕も同じ」的なことを書いてくださったのがすごくうれしかったんです。どんな人も何か力があるけど、それがうまく引き出されてない。そういう人の可能性を信じている経営者ってステキだなあと思って。ところで大きな会社の社長さんでも、安渕さんみたいに社員の悩みを気にしているものなんですか?

安渕 僕は、悩みには必ず学べるところがあると思ってるんですよ。そして社員の悩みに興味を持つのは「どれくらい人とフラットに付き合えるか」に通じる問題でもあってね。自分がいる場所と社員がいる場所を分けてしまうと興味が湧かないかもしれないけど、フラットに人や社会と付き合っていくと、いろいろな人に興味が湧いてくる。それは普通のことですよね。

紫乃ママ いやいや、全然普通なことではないです。人は年を重ね、社会的地位も上がれば、想定の範囲内だけで動くほうが安心できますもん。その安渕さんのフラットでいろいろな人たちから学ぼうとする姿勢、多くの経営者の方は持てていない気がしてしまうんですが。

安渕 やっぱり、偉く見えなくてはいけないというプレッシャーから、鎧(よろい)を着てしまうこともあるんでしょうね。僕はいろいろなことを知れば知るほど、知らないことがめちゃくちゃ多いと感じる。だから誰に会っても「自分の知らないことを知っているだろう」と思いますね。

紫乃ママ ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)って、そういうことですよね。 違いがあるってことは、それ自体でもう既に相手が自分の知らないものを持っていることなのにね。