失敗しないと学ばない。失敗しても命が取られることはない

安渕 仕事はあくまでもロールですからね。僕は、自分のチームのメンバーにはいきいきと活躍してほしいし、自分が離れた後もそうでいてほしいと常に思う。「僕がいた時代は良かったけどね」じゃ、だめ。いなくなってもうまくいく。GE時代はリーダーシップについてすごく学びましたね。組織やタスクではなく、常に人にフォーカスする。景気が悪くて、業績が良くなかったとき、僕が言われたのは「どんなときでも研修費用を削るな」ということ。

紫乃ママ 人がすべての源泉なのに、日本の企業は景気が悪くなると真っ先に研修費を削りますよね。とても残念。一方で働く人たちの中にも効率性の名の下に、さまざまな興味を封印して手っ取り早い成功を目指したがる人も多いですよね。「どうやったらもう失敗しないですむのか」って悩みを持ってくる人もいます。

安渕 失敗しないと学ばないのにね。

紫乃ママ そうなんですよ。そういうときは、「失敗を受け止める練習したほうがいいよね」と話すんです。失敗って挑戦の一つの過程だから、失敗に慣れるとか、失敗しても凹まないようにするとか、捉え方を変えていかないと挑戦することが嫌になったり、怖くなったりしてしまう。挑戦をやめてしまうと欲しいものは得られない。

安渕 「失敗した」ではなく、「うまくいかない方法は分かった、OK。じゃあ、うまくいく方法を考えよう」とよく言います。仕事のいいところは、失敗しても命を取られることは絶対ない。そこはある意味、気楽にできるはずなんですが。

紫乃ママ そういうリーダーがいてくれたらメンバーは安心して挑戦できますよね。でも、リーダー自身が失敗を恐れてへっぴり腰になっていることも多い。上司が失敗を恐れていても、自分がやりたければやったほうがいいと思いますけどね。安渕さんみたいな社長があと99人増えたらなあ……。日本も大きく変わるし、みんな安心して挑戦できるのになあ。

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取材・文/竹下順子 構成/市川礼子(以上、日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子