ニューノーマル4/事件は会議室で起こる→事件はスナックで起こる

 スナックには、いろんなバックグラウンドを持ったお客さんがたくさんいらっしゃいます。私の「スナックひきだし」には、下は生後3カ月の0歳児から上は80歳まで、いろんな人が来てくれました。本当にさまざまなお客さんがいる中で、一つ共通するのは、お客さん全員がそこにいる誰かの応援者になってあげているってこと。

 例えば、こんなことがあったの。彼女ができない悩みを抱えた男子がふらっと入ってきて、「今度、お見合いパーティーに行くんです」って。それを聞いた、たまたま隣に座っていた絵本の読み聞かせを趣味にしている方が「そこで仲良くなった子とデートするときに、絵本を読み聞かせしてあげなさい。グッとくるから」と謎過ぎる、でも彼としては真剣なアドバイスをした。後日、その男子は、お見合いパーティーで知り合った女子との初デートでアドバイス通りに絵本の読み聞かせをして、彼らは見事に付き合い始めて、結婚。そして今や1児のパパ。

 もちろん誰もがそんなスムーズに展開するわきゃない。別に婚活スナックでもないし。でもたとえ一期一会でも、言いたいことを本音で話せ、心理的安全性が保たれ、お互いがお互いの挑戦を応援し合える場所があることの大事さ。そういうコミュニティーを、みんなが持てたらいいなと思う。

 ママとしてカウンターに立ちながら、お客さんの話を聞いていてよくあるのは「それ、あなたのメーンステージである会社で言えばいいのに……」というジレンマ。誰しもが実は、心の底に熱い思いや、夢、「もっとうちの会社こうしたらいいのに」「この業界を伸ばすためにこんなことやりたい」なんていう思いを持ってる。でも、伝える「場」がない。そのうちにその思いや夢を封印して、鍵をかけてしまう。で、下手するとそんな思いがあったことも忘れてしまう。