人間が担うのは「何のためにやるのか」という目的設定

 「組織で出世を競い、その中でヒーローが生まれたり、ゴシップが生まれたりする。これはめちゃくちゃ面白いし、余裕がある時はやればいいけれど、生産性とは直結しません。また、『部族ごっこ』の中では仕事が伝統芸能化、儀式化します。儀式を何のためにやっているかは、基本的には問うてはいけない。勝ち負けの軸がなぜそうなのかも問うてはいけないんですね。

 人間の仕事は、AIに決してできない『何のためにこれをやるのか』という目的を設定することへといずれ変化していきます。これからは人間の『知能』と『生命に由来する部分』をうまく理解しながら制度設計を進める必要があるし、部族ごっこというのは控えたほうがいいんじゃないかと思っています」(松尾さん)

 最後に会場からは、「介護や育児にまだ直面しておらず、大いに働きたいと思っている若い人にどう働き方改革を伝えていけばいいか」という質問が。これに対し小室さんは、「限られた時間の中で成果を出すことをシビアに伝え続けること、長時間会社に居続けることではなく、『外に出ていろんな経験をすることが成長なんだよ』と話すことが重要では」とアドバイスを送りました。

セミナーに参加した企業トップが働き方改革についての目標を書いた色紙を掲げ、登壇者と記念撮影
セミナーに参加した企業トップが働き方改革についての目標を書いた色紙を掲げ、登壇者と記念撮影

構成・文/谷口絵美(日経ARIA編集部)