「来月からは年に5日間の有給休暇取得の義務化や、時間外労働の上限がセットされます。しかし、なぜ働き方改革をやるのかというそもそものところを同時にこれからも語り続けなければ、本当の意味で社会は変わらないのではないでしょうか。

 本来、働くことは楽しいこと。そして、この『楽しい』の意味は、実は一人ひとり違う。その一人ひとりに合う、働くことが楽しいと思える環境を築くことが、これから改めて大事になってくるのではと思っています」(小泉さん)

「成功報酬は生産性を上げる」にはエビデンスがない

 続いてのパネルディスカッションには、衆議院議員の国光あやのさん、教育経済学者で慶応義塾大学総合政策学部准教授の中室牧子さん、AI研究の第一人者である東京大学大学院特任准教授の松尾豊さんが登場。中室さんと松尾さんからは、それぞれの専門的知見に基づく働き方改革についての興味深い意見が提示されました。

 中室さんは、長時間労働が問題となる科学的根拠や、心身の健康状態が自分でコントロールできると過信してしまう「自信過剰バイアス」の存在が研究で明らかになっていることを紹介。また、「高度プロフェッショナル制度」創設の背景となっている、「時間に縛られない成功報酬が生産性を上げる」という考え方にはエビデンスがないと指摘しました。

慶應義塾大学准教授の中室牧子さん
慶應義塾大学准教授の中室牧子さん