小林 業務を徹底的に棚卸ししよういうことで、1日を振り返って15分ごとに、自分が何をやっていたのかをすべて書き出してもらいました。それを、社員の仕事内容を規定している文書と照らし合わせます。これを1年間続けることで膨大なデータが得られ、「なぜこの仕事にこの人数?」「この仕事のゴールって何だっけ?」といったことがはっきりと見えてきました。同じ仕事を異なるセクションで別々にやっていたことも発見できました。

小室 我々が全国の企業さんに行っている働き方のコンサルティングで重視しているのはまさにそこです。サカタさんが実践した15分ごとのレポートは筋トレに近いですね。これをやると、仕事の優先順位を決めたり、業務整理ができたり、仕事を受けたときに提示された納期が可能かどうかという判断が瞬時に示せるようになります。

改革は、自分が利益を得られなくても行う覚悟が問われる

羽生 最後に田中先生、総括をお願いします。

田中 北欧は30年かけて男女平等な社会をつくりましたけど、まさに今、我々が働き方について取り組んでいることの結果が分かるのは何年も先の話なんです。我々自身が利益を得られなくても、火中の栗を拾えるかどうか。自分の目の黒いうちに成果を見たいという人ばかりだったら変わるのは無理だし、100%を目指しますとか、数合わせのようなくだらないことになってしまいます。自分が受益者になれなかったとしても、次の世代のためにやれるのかどうかが問われていると思います。

羽生 企業主体の利益や合理性だけでは、北欧が30年かけて勝ち取った社会インフラは決して得られないということですね。大切な視点を本日改めて認識しました。皆さん、ありがとうございました。

構成/谷口絵美(日経ARIA編集部)