「予約の取れない美容師」として女性たちから絶大な支持を集めるTWIGGY.オーナーの松浦美穂さん。「未来に残せることしかやらない」と決め、本当に大切な美のあり方について伝えられるサロンをつくると決意して30年余り。美容業界のトップを走り続ける松浦さんが今、伝えたいこととは? 連載第4回をお届けします

妥協なし! 「土」にこだわったサロンづくり

編集部(以下、略) これまでの話から、松浦さんがヘアスタイルのみならず、ライフスタイルのデザインに挑んできたことが分かりました。このサロンも都心にありながら自然と一体化したような唯一無二の空間になっていますね。

松浦美穂さん(以下、松浦) はい、キーワードは、「ホリスティック」であり、「サステナブル」。TWIGGY. your sanctuary(東京都渋谷区)は、私が30年前から大切にしてきたポリシーを、空間として実現するというチャレンジそのものでした。「ずっと、ここで長くやっていける場所」をつくるため、妥協しなかったという自負があります。

松浦美穂さん。TWIGGY.の屋上テラスでは、有機野菜や植物を育てており、収穫した野菜がサロンに併設するカフェでも提供される。屋上に土を入れるためにとった秘策とは?
松浦美穂さん。TWIGGY.の屋上テラスでは、有機野菜や植物を育てており、収穫した野菜がサロンに併設するカフェでも提供される。屋上に土を入れるためにとった秘策とは?

松浦 こだわりの一つが「土」。大地の恵みを直接感じられる場所にしたかったんです。お客さまのご縁で「外苑前の通りから外れた路地に、一軒家を建て直してお店を入れる計画があるよ」とご紹介をいただいて出会ったのが、今のサロンが入っている建物。夏の日、現地を見に行ってみると、都心なのにセミがミンミン鳴いていて、一瞬にして都会の喧騒(けんそう)から解放された感覚があって。「あ、ここ」と直感しました。

 建設予定のビルの模型を見せてもらった時、思わず出た言葉が「土ってありますか?」。すると、オーナーは「土は全部コンクリートで埋める予定です」と言うので慌ててお願いしたんです。「申し訳ないのですが、どうか土を残してくださいませんか。ビルの入り口か裏か、どちらかに……」と。

 が、時遅し……「土」は既になく。でも、建物位置を少しずらしてもらうことでビルの裏側にスペースをつくることができ、そこに土を入れることにしました。そのスペースには、お客さまにゆったりとグリーン(植栽)と空を見ながらヘアカラーを受けてもらえるパティオをつくったんですよ。いいでしょう?

―― そして、屋上には菜園が。

松浦 これも一筋縄にはいかなかったの!