28歳でロンドンへ渡り、出産。そして心を決めた

松浦 私は福岡県で母が経営していた小さな美容室の風景を見て育ち、その母の勧めで美容師の道を選びました。「六本木美容室」の小松比奈恵さんに師事して技術を磨いた後に、28歳でロンドンへ。ファッションと音楽が大好きで、特に1960年代のロンドンカルチャーに憧れていたのと、ケミカル全盛だった当時の日本の美容界では得られない学びを求めてのことでした。その頃は自分で明確に分かっていなかったけれど、「美容の本質は健康であり、その健康は環境でつながっている」という価値観の芽は既に私の中にあったのだと思います。

25歳で美容室の店長を任された。「20代は、目いっぱい仕事して、遊んで踊って、2~3時間寝て、また仕事して。『自分という価値』を見つけるために遊んでいた時代でもありました」
25歳で美容室の店長を任された。「20代は、目いっぱい仕事して、遊んで踊って、2~3時間寝て、また仕事して。『自分という価値』を見つけるために遊んでいた時代でもありました」

松浦 息子の妊娠・出産もロンドンで。不調を解消するための自然療法として、フラワーレメディやハーブについて学ぶようになりました。偶然ニールズヤードで出会った同世代の女性が、自然療法の専門家だったのです。薬品に頼りがちだった私の体が変わっていくのを実感し、「本当に大切な美のあり方について伝えられるサロンをつくろう」と決心しました。

 日本では勇気を出せなかったけれど、ロンドンで「私の気づきは間違っていない」と確かめることができたから、「よっしゃ! パンクで行こう」と思い切れた。帰国後に、東京の三田にサロンをオープンしました。その後、麻布十番そして西麻布と移転し……でも実は、起業して10年たっても「理想にはほど遠い」とフラストレーションをためていたんです。