コマイをつまみに連日、涙の晩酌
サッカー観戦では、アリスちゃんの存在に救われたところが大きかったといいます。
「次男のポジションはゴールキーパー。キーパーの親って皆さん同じことを言うんですけど、チームが失点するたびにどうしても責任を感じてしまうんです。私は試合のたびにプレッシャーでおなかを壊していました。そんなときにアリスがそばにいてくれると、じわーっと心があったかくなるんです」
息子さんたちにとってもアリスちゃんはかわいい妹のような存在。長男は高校卒業後に上京し、文毅さんと一緒に暮らしながら1年間の浪人生活を送りますが、「アリスに会えない寂しさを紛らわすために、近所の野良猫を見に行ったりしていたらしいです」と志田さん。2019年の4月には次男も大学進学で上京し、9月に東京へ引っ越すまでの約半年間、北海道でアリスちゃんと二人きりになりました。
「もうね、子育てが終わった喪失感があまりに大きくて、毎日泣いていたんですよ。北海道ではコマイっていうシシャモみたいな魚がとれるんですけど、それをつまみに毎日ひとりで晩酌して、子どもたちの写真を見たり、次男のサッカーのDVDを見たりしてはうわーんって。それを横でアリスは全部見ていました。いてくれて本当によかったです。あのときさんざん泣いたので、今はスッキリしちゃいました(笑)」
子育てやパートに追われていた時期を終えて少し精神的に余裕が出てきたという志田さんには今、ある思いが芽生えています。
「夫はとにかく多忙だったので、転勤に合わせて引っ越しを繰り返す中で、私の育児はずっと知らない土地でのワンオペでした。頼れる人もおらず、一歩間違ったら虐待していたかもと思うようなこともありました。リカレント講座を修了したら仕事とは別に、あの頃の自分みたいに苦しんでいる若いお母さんたちを支えるような活動もできたらと思っています」
取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/鈴木愛子