父の死で人生に迷い 酒量が増える日々

 もともとバーの仕事は昼間に企業などで働くかたわら、アルバイトで始めたもの。門馬さんは15歳のときに母親を亡くしていて、病気で入退院を繰り返す父親を姉とともに支える必要があったためでした。

 「母は生前スナックを営んでいたのですが、生活のためにやむなく仕事をしている感じで、楽しそうではありませんでした。無理がたたって体調を崩し、早世したこともあり、水商売にどうしてもネガティブな感情しか持てずにいました。でも、今のお店でアルバイトを始めて着物姿のママに初めて会ったときに、光り輝いて見えたんですね。もともと京都で人気ナンバーワンの舞妓(まいこ)さんで、出身の東京に戻ってきて『卯左木』を始めた方。まるで後光が差しているようで、これがオーラというものかと強い憧れを抱きました

 お店での仕事は楽しく、お客さんにも恵まれて、門馬さんの中で水商売に対するマイナスイメージが払拭されていきました。28歳でバーの仕事1本でいくことを決めてチーママになりますが、31歳のときに父が10年間の闘病の末に亡くなると、一度道を見失ってしまいます。

 「父親のために頑張らなくてはという部分もあったので、それがなくなってほっとする一方で、自分が必要とされなくなった虚無感みたいなものがありました。振り返れば20代のときには結婚の話もあったけれど、そのときはまだやり残したことがあるような気がして結婚という選択ができなかったんですね。いつか自分の店を持ちたいとは思っていましたが、今のまま働き続けることもできるし、仕事もプライベートも迷いが多く、お酒を飲まないと眠れない日々が続いていました。りんなが来たのはそんなときでした

門馬さん行きつけの美容室の前で立ち話
門馬さん行きつけの美容室の前で立ち話
門馬さん宅の玄関の前には、取材を受けると知ったご近所さんからりんなちゃんへの差し入れのサツマイモが
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