かけがえのない家族の一員として、動物との暮らしを楽しんでいるARIA世代の女性は多いはず。物言わぬ彼らですが、時に心を幸せな気持ちで満たし、時に沈む気持ちにそっと寄り添ってくれます。「この子のためなら何でもする!」とまで思わせる存在かもしれません。人生に豊かな彩りを運んでくる最愛のパートナーとの物語を紹介します。
第26回 クラサワサトコさんと、にゃんちゅうちゃん
貫禄があるのにユーモラス…あのキャラにそっくり?
大きな窓から日差しが降り注ぐリビングの一角を占める、3階建ての立派なケージ。その屋上に置かれたクッションの上に鎮座し、リビングを見下ろしている1匹のにゃんこがいました。落ち着き払った表情には貫禄が漂い、まなざしも鋭い……のだけれど、その顔立ちにはどこか愛嬌(あいきょう)もあって、なんだか目が離せません。
彼女の名は「にゃんちゅう」。「うちで飼うと決めたときに、この子はニャンちゅうにそっくりだ!と思って私がつけました」。クラサワサトコさんにそう教えてもらって膝を打ちました。ニャンちゅうとは、長年、NHK Eテレの番組で活躍している猫の人形のキャラクター。あの独特のユーモラスな雰囲気、確かにそっくりかも。
ここは、周囲にのどかな畑の風景が広がる前橋市の一軒家。障がいのある方を対象とした図書館に勤務するクラサワさんは、会社員の夫、尚宏(たかひろ)さんと中学3年生の次男、宏輔くんと暮らしています。にゃんちゅうちゃんはあまり喜怒哀楽を表して甘えてくるタイプではないようで、「愛想が悪いんですよ」とは、実家で犬や猫などたくさんの動物に囲まれて育った経験のある尚宏さんの評。「この人薄情なんです」とクラサワさんは冗談めかして言いますが、にゃんちゅうちゃんを見る尚宏さん、冷静な発言とは裏腹に目尻が下がっています。
リビングにある勉強机に向かっている宏輔くんも何かとにゃんちゅうちゃんを気にかけている様子だし、成人して既に家を出ている長男と長女も、実家に連絡してくるときの第一声はいつも「にゃんちゅう、どうしてる?」だそう。家族みんなの関心と愛情を一身に集めているのは明らかですが、「私は猫飼いとしてはどうしても半人前っていう思いがあって。平日の日中、全員が出掛けているときはにゃんちゅうにはケージで過ごしてもらっているし、抱っこして一緒に寝てあげたりすることもできないから……」とクラサワさんは言います。そこには、やむを得ない事情がありました。