「猫は人に懐かない」のイメージを変えた子猫
今から15年前、麻里子さんと賢太さんが一緒に暮らし始めて半年ほどたったある日のこと。仕事を終えた麻里子さんが勤め先を出て歩いていると、途中の団地で5匹くらいの子猫を見つけました。「猫を飼いたいという気持ちはあったのですが、みんなすばしこくてつかまえられなかったんです。ひとまず諦めて家に帰り、夫に『子猫がいたよ』とメールしました。
その後、深夜に彼が帰宅したら、バッグの中から子猫を出してきたんです。それがどんぐりでした」
聞けば賢太さん、麻里子さんのメールから何となく場所が分かったため、自宅の最寄り駅まで戻って止めておいた自転車に乗り、団地へ向かったそう。途中のコンビニで買ったキャットフードを出すと子猫たちが集まってきましたが、1匹だけその輪に加われず、体もガリガリにやせていたのがどんぐりでした。「みんなの面倒を見ることはできないから、一番弱そうな子を連れて帰ることにしました」と賢太さんは当時を振り返ります。
それにしても仕事帰りの遅い時間に、しかも猫が苦手なのにわざわざ帰り道でもない場所まで行って猫を連れ帰ったのはどうしてでしょうか。「何だったんだろう。たぶん純粋に、猫を飼いたがっていた麻里子を喜ばせようと思ったんですね」。わわ、ごちそうさまです!
賢太さんにとって猫といえば、触ろうとすると嫌がったり怒ったりして、人に懐かないイメージ。ところがどんぐりくんはそれとは正反対の、「人懐つこい、犬のような猫」でした。
「どんぐりは本当に夫に懐いたんですよ。彼が抱っこしたときだけ、すぐに服をチュッチュと吸い始めるんです。調べたら赤ちゃん返りの甘えている行動だと分かって。『ずるい! 私もやってもらいたい!』と、わざわざ彼の服を着て抱っこしてました(笑)」