「実はがんに気づくきっかけをくれたのはルークなんです。あるときから、一緒に寝ていると私の右脇のあたりばかりをなめるようになったんですね。左側に寝かせても、右側に移動してなめ続ける。何だろうと思っているうちに、右肩がつるような感じを覚えて、それからはやけに乳がんの情報が目に入るようになりました」
雑誌が床に落ちてぱらっと開いたのがピンクリボンのページだったり、夜中にふと目が覚めてテレビをつけたら映画『余命1ケ月の花嫁』をやっていたり。あまりに気になって病院に行くと、乳がんが見つかりました。ステージ3に入り、脇にも転移していました。
土屋さんいわく、「自分は仮想敵や越えたい壁みたいなものが見つかると燃えるタイプ」。乳がんに対しても、ショックを受けるよりも「とにかく結果が出るまでやれることを全部やるぞ」と意気込む気持ちのほうが大きかったそうです。
乳がん治療後の目標に、もう1匹迎えることを決意
手術に伴う入院は11日間。担当する講座は事前に調整したので仕事を休むこともなかったそうですが、手術前に通院で受けた抗がん剤治療では毎回、骨髄抑制といわれる副作用が出る時期には家でじっとしていなければいけませんでした。そんなとき、一人暮らしの土屋さんにとって大きな慰めになったのがルークくんです。「私が寝ていると大体頭の上や肩口にくっついていたので、だるいときにルークをなでながら過ごせたことはありがたかったです」
一通り治療を終えたとき、土屋さんはもう1匹、犬を迎えることを考えます。「当時ルークがもう10歳になる段階だったので、この子がいなくなったら自分の精神状態はまずいことになるのではと思ったのが1つ。あともう1つは、今後5年、10年生きていくという覚悟を持つに当たって、これから飼う子を見送るまでは頑張らないと、という気持ちになっていいかなと思いました」