レオナルド・ダ・ヴィンチが偉大な芸術家となれたのは、公証人の婚外子だったから……。意表を突く冒頭から読者をぐいぐい引き込むベストセラー『会計の世界史』の著者、田中靖浩さん。ビジネススクールなどで「笑いの取れる公認会計士」として人気を博し、マーケティングから働き方まで分かりやすく解説する著作も多数。フリーランス歴30年、経済的な浮き沈みもあったという。3人の子どもたちには、どんなお金の教訓を伝えてきたのだろうか。
―― 海外で人気のマネー絵本の翻訳を担当されたそうですね。
田中靖浩さん(以下、敬称略) 『おかねをつかう!』と『おかねをかせぐ!』(共に岩崎書店)というカナダの絵本です。お父さんやお母さんが子どもたちに読み聞かせた後に、「お金って何だろう」「稼ぐってどういうことだろう」と親子で会話しながら学べるすてきな本です。
例えばデパートなどで「あれが欲しい」と子どもが泣き叫んで困った経験、親なら必ずありますよね。床の上に寝転がったまま、くるくる回っちゃったりして(笑)。後でこの絵本を見ながら「あの時、どうして買ってもらえなかったと思う?」と一緒に考える機会にしたらいいと思う。
お金は無尽蔵ではないから、「お金を使う」ことは「選ぶ」こと、つまり他の何かを諦めるということ。お金の話であり、かつ人生の話でもある。自分の子どもたちが小さかった頃にこの絵本があったらよかったなと思いました。
子どもに3人とも反抗期がなかったのは…
―― お子さんのお金教育では苦労しましたか?
田中 実は、24歳の長女、21歳の次女、16歳の長男の3人とも反抗期がなかったんです。なぜかと考えると、世間の価値観で子どもを抑え付けなかったからかなと。
僕はサラリーマンじゃないし、非常に浮き沈みが激しい人生を送っているし、喜怒哀楽も激しくて父親の方が子どもみたいだから、反抗する暇もなかったのかもしれないけれど(笑)。
―― 浮き沈みが激しいとは……?
田中 そもそも大学を卒業した時、無職でした。三重の田舎で猛勉強して早稲田大学商学部に合格し、憧れと希望にあふれて上京したのですが、当時の商学部は学生も先生もまるでやる気がなくてがっかり。
学部で一番難関のゼミに入ると、卒業後は教授推薦で銀行に就職するコースが用意されていてそれも面白くない。難関資格を取ろうと公認会計士の専門学校に行き、そこで素晴らしい先生に出会って人生が変わりました。