夫と1歳の娘の家族3人で、2015年にシンガポールに移住したファイナンシャルプランナーの花輪陽子さん。シンガポールは1人当たりの名目GDPが世界第8位と、26位の日本を大きく上回る富裕層の多い国だ(18年国際通貨基金=IMF=統計)。特に子供の教育には惜しまずお金をかけるという。地元のママ友たちと交流する中で、花輪さんが実感しているシンガポール富裕層のお金と子育て事情を聞いた。

―― シンガポールの代名詞ともいえる富裕層、お金に対する感覚は日本とはかなり違いますか?

花輪陽子さん(以下、敬称略) シンガポールの人口は約560万人、うちシンガポール人と永住者が約400万人で、中華系が約7割を占める多民族国家ですが、当初戸惑ったのは初対面でも「それいくら?」と気軽に質問してくること。

 給料や家賃の額も平気で聞かれますし、みんなオープンに答えます。お金持ちは自分がお金持ちであることを隠しません。街中にフェラーリがバンバン走ってますし、子供にはそれとはっきり分かる有名ブランド品を着せることを好みます。

お金持ちになりたいという欲望を隠さない社会

―― お金の話を人前でするのは品がないと日本人は考えがちです。

花輪 シンガポールはお金持ちであることを肯定する社会なのです。お金持ちになりたいという欲望を隠さないし、そのために努力もします。お金が大好きだからお金の話を積極的にして情報交換をする。ある意味健全だし、賢い。例えば経営者にとっては従業員同士お互いの給料など隠し合う方が都合がいいかもしれませんよね。

花輪陽子(はなわ・ようこ)/外資系投資銀行を経てファインナンシャルプランナーとして独立。2015年からシンガポールに移住、東京とシンガポールで活躍。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)など著書多数。ジム・ロジャーズの新著『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)を監修
花輪陽子(はなわ・ようこ)/外資系投資銀行を経てファインナンシャルプランナーとして独立。2015年からシンガポールに移住、東京とシンガポールで活躍。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)など著書多数。ジム・ロジャーズの新著『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)を監修

花輪 バブル崩壊以後の日本では、そうした感情が心の底にあったとしても蓋をして、言葉や行動にしてはならないという雰囲気がありましたが、シンガポールにいると、起業や株式投資などでリスクを取ってお金持ちになりたい、いい暮らしがしたいと素直に言える解放感があります。

―― 貧富の差が激しい社会という印象もあります。

花輪 中間層は世帯年収が1000万円程度ですが、物価が高いので日本の感覚では600万円程度です。

 パワーカップルと呼ばれる共働き富裕層は世帯年収2000万円程度から。金融機関勤務や起業家などで30代で資産5000万円とか、年に1億円を稼ぐ人もいます。一方で清掃などの仕事に従事する海外からの出稼ぎ労働者の年収は100万円程度。小さな国なので子供も経済格差は感じると思います。

―― 子供の教育に多額のお金をかけるのも当たり前とか。