子どもに「当たり前だ」と思わせたくない

佐藤 子どもは自分の周囲の環境や与えられたものは、何でも「当たり前」と思っているものです。金額や価値について説明されることもめったにありませんから。

 実は、僕自身も30代で独立するまでは、お金について考える習慣がありませんでした。経営者になると、家賃や社員の給与などをいやでも意識するのですが、博報堂の社員の時は「このビル、いまイチだな」ほどの感覚でした(笑)。

「僕自身も30代で独立するまでは、お金について考える習慣がありませんでした」
「僕自身も30代で独立するまでは、お金について考える習慣がありませんでした」

佐藤 価値もコストも意識していないというのは、タダで、誰の手も借りずに自分が生きている、勝手に物事が成り立っていると考えているのと同じことです。だから息子には気づかせたい。

 そして解説する時は実際に体験する、触れるなどのリアリティーが必要です。でないと、子どもは腹落ちしない。

 出張先で合流して一緒に見に行けたバチカン・システィーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画や、スペイン・バルセロナにあるガウディ設計の教会、サグラダ・ファミリアには小学生の息子も圧倒されていました。そんな時に、「どんな時代背景や作家の思いがあって歴史的にも価値のある作品に昇華したのか」について話したり意見を交わすのです。

―― 息子さんが生まれてから、野菜作りや釣りに熱中するようになったとか。