やがて彼女ははたと気付き、自分が本当に就きたい別のポジションに空きが出たときに、上司のところへ行って「私はこのポジションに関心があるので助けてほしい」と言いました。上司は快諾したそうです。彼女は専門性を高めるあまり、他のことに移る準備ができていないように思われていたんですね。

かつて評価の対象であった正確さが、マイナスに転じる

 そして今回もう一つお話ししたいのは、専門性を過大評価することの根底にある「完璧主義の罠」です。すなわち、何かを完璧にできているか、そうでなければ失敗だという100か0の考え方ですね。これは驚くに当たりません。往々にして、組織が女性に対して褒章や昇進を与えるのは、正確で緻密な仕事ができることが理由となっているのです。ですから女性としては、完璧に仕事をすることがキャリアを前に進めるための秘訣だというメッセージを受け取ってしまいます。

 確かにある一定のレベルまでは、完璧であるという特性が役に立ってきたと認識することは重要です。ただ、いったんリーダーのポジションに就くと、自分が手を動かして実務を行うことではなく、他の人を巻き込んで仕事をしてもらうことが仕事になります。つまり、求められることが変わってくるのです

 求められるのは、いろんな仕事や人をコーディネートすることであり、人をやる気にさせ、必要なリソースを集めてこさせること。自分が動くことではありません。

 リーダーの立場における完璧主義には多くのマイナス面があります。

日本で働く女性に向けて講演を行ったサリー先生
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