私がこれまで長く女性リーダー育成の仕事をする中で見てきたことですが、女性は新しい仕事に就くとき、「6カ月間はおとなしくしていて、できるだけ早く新しい仕事を学ぶことに専念しよう。それから人間関係を築いていこう」というふうに考える傾向があります。これは、男性とは対照的です。

 男性で成功している人というのは、新しいポジションに就くとまず「私は今この仕事で成功するためには誰が必要なのか」を知ろうとします。その結果、男性たちはより多くのサポートを得ることができ、仕事ぶりも周りに見えるようになる。また、一つのことを行うのに要する仕事量も少なくなります。

専門性を高め過ぎると、上司が手放してくれなくなる

 専門性を過大評価し、まずはできるだけスキルを学ぼう、おとなしくしていようとすることは、周りから孤立する傾向がありますし、自分の仕事ぶりが人からは見えません。これは最善の方法とはいえないのです。

 また、専門性を過大評価する女性にありがちなのが、仕事における専門性が十分に報われるだろうと考えていることです。誰か別の人が昇格して、その仕事ぶりが自分ほどではないと思ったときに、恨んだり、やる気を失ったり、非常に落胆してしまう。でも昇格した人というのは、もしかしたらネットワークづくりや、自分の仕事ぶりを周囲に見えるようにすることに注力してきたのかもしれません。

 そして見落としがちなのが、あまりに専門性を高めてしまうと、上司があなたのことを組織に欠くことのできない人材だと考えてしまうことです。これは実際にあったケースですが、ある女性は9年という社内でも異例の長期間にわたって同じポジションに就いていました。やりがいもあり、2年ほど前には上司から「あなたに異動の話があったけれど、うちのチームで欠くことのできない存在だから手放せない」と言われ、自分が評価されていることをうれしく感じたのだそうです。

 しかしだんだんと考えが変わり、「もしかして私は一生この仕事のままなのだろうか」と不安に思い始めます。