サリー リーダーになるということは、最初のうちは周りからあれこれ言われるものです。ただ、だんだんみんなも慣れてくるので、時がたてばあまりそういうことも言わなくなると思います。「それくらいは仕方がない」と割り切って、他の人の反応に対してあまり心配し過ぎないことも大切です。周囲を気にし過ぎることが、女性が前進することを最も阻んでいるのです。

外的な障壁よりも、自分で変えられることに集中する

―― 「自分を売り込む」ということについて、男性はためらいがないのでしょうか?

サリー 私の本の共同著者で、エグゼクティブ・コーチングのレジェンドでもあるマーシャル・ゴールドスミスさんがよく言っていることですが、男性にとっての悪いニュースは女性のほうが男性よりもリーダーに向いているという調査結果が出ていること。そして良いニュースは、男性はそんな調査結果を気にしないということです(笑)。

 マーシャルさんは長年のコーチング経験を基に、リーダーにとって問題のある習慣をまとめました。ただ、そこで挙げられていることは女性にとっては問題だと私は思わなかった。例えば、彼は「謝ることを学ぼう」と言っていますが、私は30年間女性を見てきて、謝ることができない人を見たことがありません。また「自分のことばかり自慢するのはやめなさい」というのも、女性には当てはまりません。それで彼と協力して、女性に特有のキャリアの邪魔になる振る舞いを見つけることにしたのです。

―― 男性にも男性特有の悪癖があると。女性ばかりが悪いのではないのですね。

サリー 女性の活躍を妨げる組織の文化や構造はコントロールできないけれど、自分自身のことはできます。自分の力の及ばないことを心配し過ぎるよりも、自分がコントロールできるものだけに集中していれば、もっと成功できる。それが、私がこれまで多くの女性リーダーと関わった経験から学んだことです。

構成/谷口絵美(日経ARIA編集部)