独立するなら不景気のときがいい

 ちなみに2010年は、決していい時代ではありませんでした。リーマンショックの直後であり、さらには広告業界が自粛ムード一色になってしまった東日本大震災の直前だったので、むしろタイミング的には最悪だったとも言えます。けれど私は、あの占いはやっぱり当たっていたと思います。

「独立するなら不景気のときがいい」

 その頃、そんな言葉を聞きました。何故なら、その後上がっていくしかないから。同業者でフリーの大先輩がそうおっしゃっていたらしいのです。

 確かに、ふりかえればあの頃は大変でした。お金の交渉の仕方もわからず、いまの3割くらいの値段で受けた仕事もあったし、震災を理由にギャラを値切られたりもしました。けれどすべてが初めてだから「そんなもんかな」と思えていた。なによりも「毎日がフリーランス」な状況が楽しく、夢中でやっていたので、ネガティブになる暇がなかった。そして「あんな不景気でもやれたんだ」という自信にもつながったのです。

 そんななか手がけた仕事が小さな賞を頂いたり、広告誌に掲載されたりしたことで、少しずつ仕事は増えていき、いまでは収入も会社員時代の3~4倍になりました。(でも、独立して収入が上がるのは、広告業界では当たり前のことだったりするんですけどね)

 そして頂く仕事も、自分の得意な方向のものが格段に増えたのです。